かつてEU ETSの事業者が利用したCDM由来のCERは、2026年のCORSIA履行にそのまま使える単位ではありません。ICAOの2026年4月一覧では、CDMの掲載は2021~2023年の試行期間欄に限られています。
クレジットを供給する事業者と調達する企業にとって、買い手の制度が変われば同じ削減成果の用途も変わります。本記事では、CDMに買い手が生まれた理由、EU ETSでのCERの扱いの変化、国際航空のCORSIAで使える単位の条件を、2026年10月時点の一次資料で整理します。
過去に需要があった単位でも、現在の航空会社が購入できるとは限りません。この記事を読むことで、過去の発行量と現在の調達可能量を分け、対象年、単位の資格、発行と引渡しの条件を確認できます。
- CDMでCERに買い手が付いた制度上の理由
- EU ETSとCORSIAでクレジットの使用条件が異なる理由
- CORSIAの対象路線とオフセット必要量の考え方
- JCMやVerraのクレジットをCORSIAで扱う際の適格性の境界
- 将来クレジットの購入条件と発行リスクを分ける方法
CDMでクレジットに買い手が付いた理由
京都議定書の目標がCERの使い道を生んだ
京都議定書では、先進国に温室効果ガス排出の削減目標が課されました。その目標の一部に使う仕組みとして、途上国で実施する削減事業から認証排出削減量(CER)を発行するCDMが設けられました。CERの1単位は1t-CO2相当の削減に対応します。
CERを買う理由は、削減事業が魅力的だったことだけではありません。先進国が目標達成に利用できるという制度上の使い道がありました。UNFCCCは、京都議定書の拘束力ある目標によって排出削減に経済価値が生まれたと説明しています。
事業の削減量と売れる単位は同じではない
削減を実施した事業が、想定した量のCERを必ず受け取れるわけではありません。CDMでは方法論、事業登録、モニタリング、検証、発行という手続きを経て、認証された削減量が単位になります。事前に置いた削減見込みと、検証を経て発行された量は区別して扱う必要があります。
将来発行されるクレジットの購入者にとっても、計画上の削減量と取得できる単位は別です。発電設備の削減見込み、制度に申請できる量、検証を経て発行される量、権利者が販売できる量は一致するとは限りません。発行前の購入契約では、発行されない可能性や販売権の範囲も考慮して、必要な数量を満たせるかを判断します。
実例として、UNFCCCの登録簿に載る中国の二つのHFC-23案件では、事業参加者が申請時に示した年平均の削減見込みが、それぞれ約481万tと約347万tです。登録簿の列名は「事業参加者による年間推計」であり、実際に発行されたCERの年別数量ではありません。この二つを足した数字を、当時の中国全体の販売可能量と呼ぶこともできません。
出典:Zhejiang Juhua HFC-23案件|UNFCCC、Changshu Haike HFC-23案件|UNFCCC

過去の発行実績から現在の用途は決められない
かつて使われた制度の単位なら、現在の制度でも使えると考えたくなります。しかし、適格性は購入先の制度と履行期間で決まります。ICAOの2026年4月の一覧では、CDMはCORSIAの2021~2023年の試行期間にのみ記載され、2024~2026年と2027~2029年の欄には載っていません。
CDM事業の削減成果そのものと、CORSIAの履行に使える資格は別の問題です。かつてCERを利用した事業者であっても、航空会社が現在の履行に利用できるかどうかは、対象年と単位ごとの現行ルールに従って判断されます。
出典:CORSIA適格プログラム一覧、2026年4月|ICAO
EU ETSと国際クレジットの利用の変遷
2005年に始まった排出枠市場とCER
欧州連合の排出量取引制度(EU ETS)は2005年に始まりました。制度参加者が必要とする排出枠と、域外の削減事業から生まれるCERは、法的には別の単位です。CERをどこまで利用できるかは、EU ETSの各期間のルールで定められてきました。
EU ETSの参加事業者は、制度の定める履行に排出枠を使います。CERは途上国のCDM事業から発行される単位で、EUの排出枠(EUA)とは異なります。両方に市場価格があっても、制度上の用途や利用限度が異なるため、同じ商品として価格を比べることはできません。
事業者の国際クレジット利用は段階的に変わった
EU ETSの第2フェーズ(2008~2012年)には、参加事業者が一定の条件を満たす国際クレジットを履行に直接利用できました。CDM由来のCERや共同実施(JI)由来の排出削減単位(ERU)が対象となり得ましたが、無制限に利用できたわけではありません。京都議定書の下で国が目標達成にCERを使う仕組みと、事業者がEU ETSの規則に従って履行に使う仕組みは、利用主体が異なります。
第3フェーズ(2013~2020年)には、事業者が利用できる国際クレジットに種類や事業などの質的制限と数量制限がありました。利用できるCERやERUも直接提出するのではなく、まずEUAに交換し、その排出枠を履行に使う方式です。同じCERでも、事業者が購入して直ちに履行に充てられるわけではなく、対象資格と残る利用枠を確認する必要がありました。
2021年に始まった第4フェーズでは、EU ETSの履行に国際クレジットを利用できません。第3フェーズの履行に関連する交換と利用の期限は、欧州委員会が2021年の更新情報に示しています。それ以前の期間に関する取扱いと、第4フェーズの排出に国際クレジットを利用できるかどうかは別です。
出典:EU ETSにおける国際クレジットの利用|欧州委員会、2021年の国際クレジットの交換と利用に関する更新|欧州委員会
排出枠とCERの価格を比べる条件
EU ETSの排出枠(EUA)とCDM由来のCERは、いずれも排出量1トンに対応していても別の商品です。第2フェーズには条件を満たすCERを直接利用できましたが、第3フェーズにはEUAへの交換が必要となり、対象と数量にも制限がありました。買い手が利用できる範囲が異なる価格を、同じ「1トンの相場」として並べることはできません。
過去価格を比べる際には、取引された単位と時期を特定する必要があります。排出枠とCERでは利用できる範囲が異なり、現物と先物でも引渡時期や契約条件が違います。「1トン当たり何ユーロ」という数字だけでは、どの商品がどの条件で取引された価格か分かりません。
利用制限は買い手の選択肢に関わりますが、EUの規則変更だけでCER価格の変化を説明することはできません。事業の登録から検証、発行までの時間と、購入や履行の時期にはずれがあり、供給や需要の動きも考慮する必要があるためです。欧州で過去に需要があったことも、現在のEU ETSやCORSIAで同じ単位を利用できる根拠にはなりません。
CORSIAの需要はどう決まるか
第1フェーズと第2フェーズで対象国が変わる
CORSIAは、国際民間航空機関(ICAO)が定める国際航空の市場メカニズムです。2021~2023年の試行期間を経て、2024~2026年は参加国が任意で加わる第1フェーズ、2027~2035年は一定の航空活動量を持つ国が対象となる第2フェーズに進みます。例外となる国の区分や任意参加も制度で定められています。
参加国が増えることは、市場の対象範囲が広がる材料です。ただし国数をそのまま購入量に置き換えることはできません。オフセットの対象は、両端の国が対象に含まれる国際路線の排出です。航空会社ごとの路線網が違えば、同じ国に拠点を置いていても対象排出量は変わります。
購入量は路線と排出量から計算する
ICAOの計算では、2024~2035年の対象部門の成長係数を算定する際、2019年の対象部門排出量の85%を基準として用います。この係数は、対象年の排出が基準をどれだけ上回るかを反映します。航空会社の義務量には、対象路線での自社排出量などの条件が関わります。
2029年までの係数は部門全体の伸びを用いる設計です。各航空会社の排出増加率を、そのまま自社の義務率にする仕組みではありません。航空会社が新たに必要とする数量を知るには、制度上の必要量に加え、すでに保有する適格単位や将来の購入契約も考慮する必要があります。
航空会社の追加調達量は毎年一定とは限りません。対象路線の実績、国の参加状況、利用できる燃料による削減、調達済みの適格単位がそれぞれ影響します。ICAOの計算式や参加国数だけでは、各社の未調達量は分かりません。

SAFとクレジットの役割を混同しない
航空会社は、CORSIAの要件を満たす持続可能航空燃料などを利用した場合、制度上の排出削減を計算に反映できます。残るオフセット義務には適格な排出ユニットを用います。燃料と排出ユニットは、どちらも対応手段ですが、購入条件も供給者も違います。
「SAFが不足するから、クレジットが大量に売れる」という見通しには、少なくとも二つの確認が要ります。対象となる燃料の供給量と、各航空会社が負う義務からその燃料分を差し引いた残量です。いずれも現行の適格プログラム一覧だけでは分かりません。
出典:CORSIA適格燃料|ICAO、CORSIA適格排出ユニット|ICAO
2027年の需要を読む三つの条件
2027年からの需要を左右するのは、対象路線の広がり、対象路線の排出量、航空会社が確保する適格燃料と排出ユニットです。路線と排出量は制度上の義務量に関わり、燃料と購入済みの単位は追加調達に関わります。同じ「需要」という言葉でも、義務量とこれから購入する量は一致しません。
対象国が増えても、追加された路線の排出が小さければ、その分の義務量は大きくなりません。逆に義務量が増えても、航空会社が長期契約で単位を確保していれば、追加購入量はその分だけ小さくなります。市場予測の数字が制度上の義務量を示すのか、新たな購入量を示すのかで、売り手にとっての意味は変わります。
具体的には、航空会社が2027年の対象路線を確定し、適格燃料による削減とその年に使える確保済み単位を反映した後に、追加で調達すべき量が見えてきます。売り手は路線の総排出量を購入予定量とみなせません。供給する単位の発行時期が航空会社の履行時期に合うかも確認が必要です。
CORSIAで使える単位の見分け方
承認プログラムは履行期間ごとに異なる
ICAOは、CORSIAで使える排出ユニットの発行プログラムを、履行期間別に公表しています。2026年4月の一覧には、2021~2023年の試行期間、2024~2026年の第1フェーズ、2027~2029年の第2フェーズの初期期間が別々の列で示されています。ある列に載るプログラムが、別の列でも利用できるとは限りません。
ICAOの一覧は、利用できるプログラムを確認する入口です。詳細文書には発行年、活動開始時期、対象外の活動、ホスト国による証明などの条件が書かれています。航空会社が特定の履行期間に単位を使うには、プログラムの掲載に加えて、その単位が詳細条件を満たす必要があります。
特に2021年以降に生まれた削減成果では、ホスト国の証明に関する要件が厳しくなります。同じ国の同じ事業から出た単位でも、発行年と証明の状態で買い手の用途が変わり得ます。供給者の「CORSIA対応」という説明だけでは個別単位の適格性は確定せず、識別情報とホスト国の書類を含む確認が必要です。
| 開始年 | ICAO一覧の履行期間と確認事項 |
|---|---|
| 2021 | 2021~2023年の試行期間。過去の履行に使えるプログラムと単位の条件を確認する |
| 2024 | 2024~2026年の第1フェーズ。現在の履行期間に承認されたプログラムと対象単位を確認する |
| 2027 | 2027~2029年の第2フェーズの初期期間。将来分の契約では、この期間の承認と対象単位を別に確認する |
出典:履行期間別の適格プログラム一覧|ICAO、適格排出ユニットの詳細条件|ICAO
Verraの承認は全方法論の承認を意味しない
2026年4月のICAO一覧には、VerraのVerified Carbon Standard(VCS)が2024~2026年と2027~2029年の欄に載っています。これを見て、VCSの全クレジットを航空会社へ販売できると判断するのは早計です。詳細文書には対象外の活動や、特定の条件を満たす場合だけ認められる例外があるためです。
CCSも「全部使える」「全部使えない」の二択では整理できません。ICAOの2026年4月版は、VCSの特定のCCS関連活動について、DACと地中貯留の所定の方法論モジュールを組み合わせる場合の例外を記しています。そこで求められるホスト国の承認や安全対策を含め、個別単位の条件を読まなければなりません。
日蒙JCMの「条件付き」は試行期間の欄にある
日本のJCMがICAOの一覧に載っているという説明にも、期間の確認が欠かせません。2026年4月の一覧で「日本とモンゴルのJCM」は条件付きとして記載されていますが、位置は2021~2023年の試行期間の列です。2024~2026年と2027~2029年の列には記載がありません。
注記の「条件付き」は、プログラム側の追加対応待ちを示します。JCM全体が現在のCORSIA向けに承認されたという意味でも、日蒙JCMの単位が実際に航空会社へ販売されたという意味でもありません。JCM自体の仕組みは、JCMの基礎解説で整理しています。

将来の供給をどう評価するか
技術的に削減できても追加性の確認が残る
大規模なCCS設備が計画されれば、多くのCO2を回収または貯留できる可能性があります。しかし、設備の処理能力だけからクレジットの発行量を求めることはできません。どの方法論に適合し、通常の事業活動と比べてどの削減が追加的かを示す必要があります。
パリ協定6条4項のルールは、信頼できるベースラインと追加性の立証を求めています。ホスト国の政策や削減目標との整合も案件ごとに評価します。CCSが年間数百万トンを扱えるという構想があっても、その全量が認証され、さらにCORSIAで利用できる単位になるとは限りません。
追加性とは、クレジット収入がなくても実施される通常の事業と区別し、制度が求める条件を満たすことです。判断には対象活動の方法論、投資採算、通常の実施状況などが関わります。国が技術基準を定めれば常に追加性が認められるわけでも、再生可能エネルギーだから一律に否定されるわけでもありません。
出典:パリ協定6条4項のルール、決定3/CMA.3|UNFCCC
小規模案件の採算を一つのトン数で決めない
省エネルギー事業では、設備による削減が小さいと、認証や検証の費用を販売収入で賄いにくくなることがあります。この商業上の問題と、制度上の最低削減量は別です。CDMには小規模事業向けの簡素化された手続きがありましたが、そこで定めた規模の上限は、採算が成立する最低量ではありません。
例えば、過去のCDMでは省エネルギー活動を年間15GWh相当までとする小規模区分がありました。異なる区分に示された年間15,000t-CO2相当未満という値を、省エネ案件の一律の最低数量として使うこともできません。現在の案件の採算には、想定発行量、手続費用、引渡時期、買い手の価格条件が関わります。
出典:小規模CDM事業の簡素化手続き、決定6/CMP.1|UNFCCC
購入予約と事業投資は別の資金である
将来発行されるクレジットの購入希望があっても、設備を建設する資金がすべて賄えるとは限りません。購入予約は将来の引取条件を定める取引であり、前払いは支払時期を変え、出資や融資は事業の資金とリスクを直接負担します。同じ「買い手が付いた」という言葉で、これらをまとめると資金繰りを見誤ります。
将来分の購入者は、発行されなかった場合、引渡しが遅れた場合、予定した用途の条件を満たさなかった場合の扱いを契約前に確認します。事業の資金調達と購入契約を分け、それぞれの当事者が負う責任を明確にすることが必要です。
発行済みの国内J-クレジットでは、査定・契約後の登録簿での移転確認と入金までが取引の流れになります。J-クレジットの売却方法はこの国内取引の手順を説明しています。将来発行される単位には、これに発行時期や不発行時の扱いも加わります。
商用化済みの技術でも案件ごとに確かめる
すでに商用化された技術でも、設備の導入費用や事業リスクが残り、クレジット収入が導入を後押しする場合があります。ただし、技術の成熟度だけで追加性は決まりません。制度上の方法論に照らして、その活動がクレジット制度なしでも実施されるかどうかを評価する必要があります。
一方、新しい技術だから対象外とも言えません。現行の6条4項ルールは、全ての研究開発段階の技術を一律に排除する条文ではなく、承認された方法論、ベースライン、追加性などで活動を評価します。実証段階の小規模案件と反復可能な商用案件では費用と履行リスクが異なり、買い手に示せる供給見通しにも差が生じます。
購入者が将来の供給を評価する際には、通常の事業として実施される範囲、クレジット収入が埋める費用差、発行の見込み時期と数量が重要です。技術の新旧だけでは追加性や将来の供給量を判断できません。発行見込みを示す資料と、実際に販売できる単位の権利は、それぞれ確かめる必要があります。
クレジットの調達条件を確認する3つの手順
手順1 利用目的と履行期間を決める
クレジットに必要な条件は利用目的によって異なります。国際航空のCORSIAへの履行、日本国内の制度への対応、自主的な環境主張では、同じ名称の単位がすべての用途で使えるとは限りません。用途を決めると、どの制度の規則と対象年を調べるかが明確になります。
航空会社は対象路線と履行期間を確認し、国内制度に使う企業は当該制度の対象年と利用条件を確認します。自主的な環境主張の場合も、用いる基準や主張の内容に合う単位であることが必要です。履行主体と利用時期を定めてから候補を比べると、用途の異なる単位を同じ調達量に数えることを避けられます。
手順2 必要数量と購入条件を整理する
購入者は用途に加え、必要数量、希望する引渡時期、予算、社内の決定時期を整理します。発行済み単位を購入する場合と、将来発行される単位を予約する場合では、発行リスクと支払条件が異なります。数量や価格だけでなく、必要な時期に利用できることを確認する必要があります。
JCMの購入者は日本側の用途と対象年を、CORSIAに対応する航空会社はICAOの該当期間の一覧と単位ごとの条件を確認します。JCM案件の削減見込みや候補量は、そのままCORSIA適格単位の供給量にはなりません。用途が複数ある企業は、それぞれに必要な数量を分けて検討できます。
取引に先立ち、購入者と供給者は利用資格を誰が確認し、どの資料を用意するかも決めます。発行や移転の条件が購入者の利用時期と合わなければ、希望する数量の候補があっても履行には使えません。候補の紹介や条件調整を受ける場合も、適格性の判断を担う主体を明確にすることが必要です。
手順3 適格性と引渡条件を照合する
CORSIAへの利用を予定する場合は、該当期間のプログラム、活動、単位の発行年、ホスト国の証明を確認します。そのうえで、供給者の販売権、発行見込み、既存の売買予約、移転可能時期を照合します。事業から生まれる全クレジットが、買い手の必要な年に自由に移転できるわけではありません。
JCMの調達では、利用する制度の対象年と必要数量に加え、案件の発行、配分、移転の条件を確認します。CORSIAではICAOの適格プログラム一覧と航空会社の履行期間に照らします。制度ごとに確認する資料が異なるため、JCMの候補をそのままCORSIA向けとして数えることはできません。

CORSIAクレジットの価格と見通し
実勢価格帯は条件なしには示せない
ICAOは利用資格を定めますが、全ての適格単位に共通する購入価格を設定するわけではありません。売買では、方法論、発行年、ホスト国の証明、納期、契約数量、発行リスク、支払時期などが条件になります。提示価格だけを比較すると、必要年に納入できない案件が安く見えることもあります。
「CORSIA向けなら国内のクレジットより高い」という一律の予測だけでは、個別の見積もりを比較できません。価格と合わせて、必要時期に引き渡せる数量、対象年の適格性、不発行時の扱いが重要です。2026年の統一的な実勢価格帯は確認できていません。
国内J-クレジットの買取価格と参照価格の説明も、国内の制度と商品を対象とします。そこで示す価格をCORSIA向け単位の相場として使うことはできません。価格を比較するには、それぞれの単位が使える制度と年限をそろえる必要があります。
国内と海外の制度を混ぜない
JCMは日本とパートナー国の制度である
JCMは、日本とパートナー国が協力して削減成果を配分する二国間の仕組みです。日本企業がJCMクレジットを検討する場合と、航空会社がCORSIAの義務に使う単位を探す場合では、買い手の制度が違います。両者に「国際クレジット」という共通点があっても、一方の適格性から他方を推定できません。
JCMの購入を検討する日本企業は、利用する国内制度と対象年を確認します。航空会社がCORSIAの履行に使う場合は、ICAOの該当期間の一覧と単位の詳細条件を確認します。同じ国や技術の案件でも、必要な承認、対象年、移転先は用途によって異なり得ます。
国内の利用目的にも独自の適格条件がある
日本企業が排出量取引制度や温室効果ガス排出量の報告に使いたい場合も、対象となる単位と手続はその国内制度で確認します。CORSIAに掲載されているプログラムだから日本の義務に使える、という推論は成り立ちません。逆に、日本で使えるJCMクレジットだからCORSIAにも使える、という推論も成り立ちません。
使用目的が複数ある買い手は、国内の期限に必要な量と航空分野の履行年に必要な量を分け、それぞれの制度で候補単位を利用できるか確認します。国内GX-ETSとJCMの関係はGX-ETS向けクレジットの解説で確認できます。
国内のJ-クレジットを無効化する場合には、登録簿での移転と制度管理者による無効化通知書を区別します。J-クレジットの無効化通知書は国内制度の手続きを説明する資料です。CORSIAの履行に必要な手続きは、航空会社が別途確認する必要があります。
CDM、JCM、CORSIAの比較表
CDMの買い手、JCMを検討する日本企業、CORSIAに対応する航空事業者には、それぞれ異なる購入理由があります。制度ごとの用途、対象年、単位の条件を比較すると、削減見込みと実際に利用できる数量の違いが分かります。
| 市場 | 確認する順序と数量の注意 |
|---|---|
| CDM | 最初に京都議定書の目標に使える仕組み、次にCERの発行と利用条件を確認する。過去の発行量は現在の購入量ではない |
| JCM | 日本のJCM需要では、最初に買い手の国内での用途と対象年、 次にJCMの発行、配分、移転条件を確認する。案件の削減見込みを販売可能量と混ぜない |
| 航空 | CORSIAでは、最初に対象路線と履行期間、次にその期間の適格プログラムと単位を確認する。 ICAOの参加国数は購入量ではない |
表は制度ごとの確認事項を示したもので、価格の高低を示すものではありません。購入者は用途と対象年に合う単位を確認したうえで、数量、価格、引渡条件を比較します。
よくある質問(FAQ)
Q. CDMのクレジットは現在のCORSIAで使えますか?
ICAOの2026年4月一覧では、CDMが記載されているのは2021~2023年の試行期間欄です。2024~2026年と2027~2029年の欄には載っておらず、現在の履行向けに使えるとは確認できません。
購入の可否はプログラム名だけでなく、対象年と単位の詳細条件で確認します。別の用途に使える可能性があっても、それをCORSIAでの適格性と混同することはできません。
Q. JCMクレジットは航空会社に販売できますか?
JCMであることだけを理由にCORSIA向けと提示できません。2026年4月のICAO一覧で条件付きの記載があるのは日蒙JCMの試行期間欄で、2024年以降の欄は空欄です。
航空会社がどの用途で購入するか、CORSIAの履行なら何年のどの単位が必要かを先に確認します。自主的な利用など別の用途なら、その用途のルールを改めて照合します。
Q. VerraのクレジットならすべてCORSIAに使えますか?
使えません。Verra VCSはICAOの対象プログラムに含まれますが、履行期間、発行年、活動、ホスト国の証明などの条件があります。
特にCCSを含む活動では、一般的なプログラム承認だけを見て適格と判断できません。対象の方法論とモジュール、追加条件まで詳細文書で確かめます。
Q. 2027年からCORSIA向けの需要は必ず増えますか?
2027年に第2フェーズへ移ることは制度で定められていますが、それだけで新規購入量は確定しません。対象路線の排出、燃料による削減、航空会社の既存調達が必要量を左右します。
需要の見通しを調べる際は、参加国数や総排出量に加え、航空会社の対象路線、履行条件、調達済みの単位を確認する必要があります。制度上の義務量が増えても、航空会社の新規購入量が同じだけ増えるとは限りません。
Q. 将来クレジットの契約では何を確認すべきですか?
最初に利用目的、履行年、必要数量、価格条件を確認します。その後、供給側の発行見込み、販売権、引渡時期、適格性の確認主体を照合します。
不発行、遅延、制度変更が起きたときの扱いも契約条件になります。購入予約と設備投資を同じ資金として扱わず、各当事者の責任を分けて決めます。
まとめ
CDMでは、京都議定書の目標にCERを使えることが買い手の理由になりました。EU ETSの事業者による国際クレジットの利用は期間ごとに変わり、2021年以降の第4フェーズには認められていません。CORSIAでは対象路線、履行期間、単位ごとの適格性が航空会社の調達条件を決めます。
購入者は用途と対象年を決めたうえで、候補単位の資格、必要数量、発行と引渡しのリスクを確認します。JCMとCORSIAでは適用される制度が異なるため、それぞれの条件を別に照合することが必要です。カーボンリンクは候補紹介や条件整理、関係者との調整を通じて、クレジットの調達を支援します。
