無料の企画設計シートをダウンロード
J-クレジットを商品やサービスに組み込む企画では、販売単位、対象とする排出、算定根拠、調達と無効化、顧客への表示をつなげて整理する必要があります。無料の企画設計シートは、関係者がそれぞれの未決定事項を持ち寄るための記入用資料です。
Excel版は入力と参考計算に、PDF版は閲覧や印刷に使えます。カーボンリンクが用意した3つのシートをもとに、企画の立ち上げから販売後の証拠管理まで、担当者が確認したい順に解説します。
このシートだけで購入量、価格、納期や環境表示の適否は確定しません。排出量の算定や表示の審査は、販売元が算定担当者や法務などの専門家と個別に確認してください。
- 企画設計シートで整理できる項目と、個別確認が必要な事項
- 販売単位とオフセット対象の排出範囲を分けて考える方法
- Excel版とPDF版の使い分けと、3つのシートの記入手順
- 調達、無効化、証拠保管と顧客向け表示の確認事項
- 架空の配送サービスを使った企画段階の記入例
J-クレジットの商品企画シートでできること
商品化の検討事項を一枚ずつ整理する
企画設計シートは、J-クレジットを活用した商品やサービスについて、担当者が話し合う項目を並べた資料です。商品名や提供価値から始め、対象とする排出、販売実績、調達、証拠、表示へと記入を進めます。
企画の初期には、販売担当者が知る情報と算定担当者が必要とする情報が揃っていないことがあります。空欄を埋めることを優先せず、誰が何を確認するかを残せば、次の打ち合わせで判断する材料になります。
Excel版の状態欄では「未着手」「確認中」「確認済」を選べます。確認済とした項目も、後から対象や前提が変われば、関係者と確認し直します。
たとえば、営業部門が考える提供内容と、算定部門が手元に持つデータを同じ欄で照らせます。決めた内容だけでなく、まだ情報を持っていない部署も見えるため、依頼先を決める材料になります。
シートは社内の企画共有や相談の準備に利用できます。個々の商品の排出量を自動で検証したり、制度や顧客の要件への適合を判定したりする機能はありません。
カーボンオフセットとJ-クレジットの関係
カーボンオフセットは、自らの温室効果ガス排出量を認識し、削減に努めたうえで、削減が難しい部分を他の場所で実現した削減量や吸収量などで埋め合わせる考え方です。環境省は、この仕組みとJ-クレジットを紹介しています。商品に組み込む場合は、まず自社で取り組む排出削減と、埋め合わせの対象として検討する範囲を整理します。クレジットの利用だけで商品そのものの排出が減ったと表現すると、実際の取り組みとの違いが伝わりません。
商品企画で検討する対象は、事業者の全事業活動とは限りません。販売する商品との関係を明らかにしたうえで、何を算定して何を埋め合わせるのか、社内で同じ説明ができるようにします。
J-クレジットを使えば、どの方法や表示でも自動的に認められるわけではありません。利用目的や相手先の要件を確認し、対象範囲と算定根拠に合う進め方を選びます。
制度の概要はJ-クレジットの解説も参照できます。
シートを埋めても確定しないこと
記入済みの欄は、その時点の企画情報を表します。購入量、銘柄、在庫、価格、納期、契約条件や無効化の方法は、候補や取引条件を個別に確認するまで確定しません。
排出量についても、シートへの入力と算定結果の検証は別の仕事です。活動量のデータや排出係数、計算方法が適切か、販売元が算定担当者や必要な専門家と確認します。
事業上の判断として希望する時期に販売を始められるかどうかも、必要な確認が済む時期に左右されます。確認中の条件と決定済みの条件を区別し、見積もりや販促の担当者へ共有してください。
表示案は、対象範囲、実施状況、証拠と整合するかを確認したうえで承認します。記入例にある文言を、そのまま自社商品の確定表現として使うことはできません。

販売単位と対象排出を先に分ける
販売する単位を決める
販売単位は、商品やサービスをどの単位で提供し、実績を数えるかを表します。シートでは1件、1配送、1契約などを例示しており、販売時期や集計時期も併せて記入します。企画時に販売の開始と終了が決まっている場合は、その予定も欄に残します。継続して提供するサービスでは、いつの実績を対象として確認するのか、集計担当者と共有します。
同じサービス名でも、契約内容や提供範囲が異なれば、まとめて数えることが適切とは限りません。複数の商品を扱う場合は、商品ごとに分けて整理すると、後で販売数と算定根拠を照合しやすくなります。
予定数と実績数は区別します。企画時の販売予定は準備の目安になりますが、返品や取消を含む販売実績が固まる前に、その数を最終的な対象数として扱うことはできません。
記録上の名称と顧客に販売する名称が異なる場合は、その対応も確かめます。対象商品を集計できない販売システムであれば、どの記録を組み合わせて対象数を出すのかを販売開始前に検討します。
記録方法には、集計者、集計頻度、参照する販売記録、返品や取消の扱いを書きます。数える範囲に変更が生じたときに、誰が元の記録を確認するかも決めておきます。
オフセットの対象範囲を言葉にする
販売単位が決まっても、対象とする排出の範囲は別途決める必要があります。たとえば配送を販売単位にするとしても、どの活動に伴う排出を含むかは、販売単位だけからはわかりません。
カーボンリンクは、この食い違いを見落とさないよう、シートの「販売単位」と「オフセットする排出の範囲」を別欄にしています。対象の活動に加えて、含めない排出や未決定の範囲も記入します。
対象の説明は、算定担当者と顧客が同じ範囲を想像できる粒度にします。「サービス全体」と記した場合に、どの工程まで含むか説明できないなら、範囲を特定する作業が必要です。範囲の記入時には、対象期間やサービスの提供場所など、算定に影響する条件も担当者と確認します。提供内容が異なる注文をまとめる場合は、同じ範囲として扱える理由を説明できるかが判断の手がかりです。
範囲の候補を関係者に示すときは、決定前の案であることも記します。提供内容がまだ固まっていない段階では、変更の可能性を担当者に伝え、後から確定した範囲を記録します。
対象範囲が変われば、必要な活動量のデータや表示案も変わります。販売開始後に提供内容を変更する場合は、既存の算定と記録をそのまま使えるか確認します。
算定方法と確認者を記録する
排出量の算定根拠には、対象となる活動量、使う排出係数、計算方法と確認者を記入します。活動量は、対象活動の規模を表すデータで、配送の企画であれば距離などが候補になります。どのデータが適切かは対象範囲や実態によって異なります。入手できる数字を先に決めてから対象を広げたり、未確認の値を顧客向け表示に使ったりせず、算定担当者に確認します。
算定に使うデータの粒度も確認します。個別の販売ごとに得られる情報と、一定期間をまとめた情報では、対象販売数との対応づけ方が異なるため、適用方法を算定担当者と相談します。
データに不足が見つかった場合は、その不足を隠さず、どの期間や活動の情報が欠けているかを記入します。補い方を含む算定上の判断は、担当者や専門家に委ねます。
出典、対象期間、更新日、確認した人を記録しておくと、販売実績を集計する際に同じ前提を使っているか追跡できます。専門的な算定が必要な場合は、企画シートの外で方法と結果の確認を進めます。
出典:カーボン・オフセット ガイドライン Ver.3.0|環境省
Excel版とPDF版、企画の進め方を比較する
無料のシートは同じ確認事項を異なる形で使えます。作業に応じた選び方は次のとおりです。
| 比較項目 | Excel版 | PDF版 |
|---|---|---|
| 主な用途 | 欄への入力と更新 | 内容の閲覧と印刷 |
| 状況の管理 | 各項目の状態を選択 | 印刷して手書きで記録 |
| 参考必要量 | 確認済み原単位と対象販売数から参考値を計算 | 計算欄を確認し、必要に応じて別途計算 |
| 向いている場面 | 担当者が前提を更新しながら検討する | 会議で項目を見渡し、確認事項を持ち寄る |
| 共通の注意 | 購入条件、算定の妥当性、表示の適否は個別に確認する | |
社内で入力を進めるならExcel版
Excel版では、記入欄に現時点の情報を入力し、状態欄で「未着手」「確認中」「確認済」を選べます。入力者が不明点を残し、算定や表示の担当者が後から確認する使い方に向いています。
参考計算欄には、確認済みの原単位と対象販売数を入力します。数値が揃った場合に積を表示する仕組みですが、入力した前提が正しいかを自動判定するものではありません。
会議前に各担当者が自分の知っている欄を記入し、会議では確認中の欄を中心に話し合う方法もあります。状態の選択は確認作業の代わりではないため、確認済みとした根拠は別に残します。
確認の依頼を受けた担当者は、判断に使った資料と確認日を共有します。別の部門が結果を転記するときも、数値や条件だけでなく、元の前提に戻れるようにしておきます。
複数人でファイルをやり取りする際は、誰が更新し、どれが最新の版かを決めます。販売数や対象範囲が変わったとき、古いファイルの参考値が企画の確定値として使われないようにします。
会議で確認項目を共有するならPDF版
PDF版は項目と記入例を閲覧したり、印刷したりするための資料です。社内会議や初回の相談で、担当者が手元に持って確認事項を書き込む場面に使えます。
手書きで残した決定事項は、会議後に担当者と期限を添えて共有します。印刷した資料だけに変更が残ると、算定担当者と表示担当者が異なる前提で作業を進めるおそれがあります。
会議の場では、答えられない欄の横に確認先を書くと、議事録へ引き継ぎやすくなります。会議後に担当者がExcel版を更新する場合は、手書き版と更新後の内容に差がないか確認します。
PDFの参考計算欄を使う場合は、確認済み原単位と対象販売数を別途計算し、結果と前提を記録します。数字の記載だけで、購入や無効化の数量が確定するわけではありません。
企画の状態に合わせて次の行動を選ぶ
シートを使い始める時点で、すべての担当者が揃っている必要はありません。決定できる項目と、誰かの確認を待つ項目を分け、次の判断に必要な人を特定します。
| 現在の状態 | 先に行うこと | 判断を急がない事項 |
|---|---|---|
| 対象範囲が未定 | 商品と販売単位を書き、対象候補と除外候補を出す | 確定した排出量や表示文言 |
| 算定方法を確認中 | 活動量、係数、データの出典と算定担当者を整理する | 未確認値を使った必要量の確定 |
| 販売実績が未確定 | 集計頻度と返品・取消の扱いを決める | 予定数を実績数として扱うこと |
| 調達や表示を検討中 | 希望条件、証拠、表示案の確認者を並べる | 在庫、価格、納期や表示の適否の確約 |
対象範囲が未定のまま調達条件だけを先に詰めても、候補が企画の用途に合うか判断できません。顧客との販売時期が決まっている場合ほど、先に確認すべき事項と回答期限を分けて管理します。
企画の進め方は、販売元の体制や顧客の要件によって変わります。必要な判断を一人で抱えず、算定、調達、法務、広報など、それぞれの担当者に渡せる形に整えます。

3つのシートの記入手順
「1 商品と対象」に企画の前提を書く
最初のシートには、商品やサービスの名称、対象顧客、提供価値、販売単位と予定時期を記入します。環境面の企画だけでなく、商品本来の便益も書くことで、何を提供する商品なのか共有できます。
対象顧客の欄では、誰が購入を判断し、何を受け取るのかを整理します。環境に関する説明が必要な相手と、商品の使い方を知りたい相手が異なる場合は、双方に必要な情報を考えます。
続いて、対象とする排出の範囲と算定根拠を書きます。対象の活動が決まっていなければ候補と未決定事項を記し、算定担当者を決めるまで確認中として扱います。
算定根拠の欄には、現時点で使えそうな資料と、まだ確認できていない点を分けて記します。資料の候補を書いたことと、その資料の適切性を確認したことは区別します。
販売実績の記録方法とクレジットの希望条件も、このシートにあります。由来や地域、予算、希望時期は条件の候補として記し、在庫や価格、納期は都度照会します。

「2 調達と表示」に実施と確認の道筋を書く
2つ目のシートは、調達と無効化の時期、必要な証拠と保管者、顧客への表示案と確認者を整理する欄です。実績確定後の購入を想定する場合は、誰がいつ実績を渡し、誰が条件を確認するかを書きます。
証拠欄は、何を残すかと同時に、どの段階で資料を受け取るかを整理する場所です。調達前には受け取れない資料がある場合、その予定を記し、受領後に担当者が確認します。
費用欄では、初期設計にかかる費用とクレジット代金、手数料を分けて考えます。いずれも個別の見積もりで確認する項目であり、シートに希望予算を書いても提供条件は確定しません。
販売元が集計し、別の担当者が調達を依頼する場合、実績データの受け渡し時期を両者で確認します。表示に必要な証拠をいつ受け取れるかも、販売時の案内に影響するため一緒に整理します。
最後に、次の行動、担当者、期限を記録します。担当者が未定のときは、誰を指名するか自体を次の行動にすると、確認待ちのまま止まる項目を見つけやすくなります。
「3 記入例」で空欄と確認事項を見つける
Excelの3つ目のタブは「3 記入例」で、シート内の見出しは「記入例と確認事項」です。架空の配送サービスを使い、対象、算定根拠、販売実績、調達、表示、次の行動の書き方を示しています。
例には数値、銘柄、取引条件が示されていません。実際の案件や取引の実績ではなく、未確認事項をどう書き残すかを見るためのものです。
記入例を読む際は、書いてある案だけでなく「未定」「確認中」「未承認」という状態に注目します。埋まっている文章を正解として写すのではなく、自社の企画で同じ確認が済んでいるかを確かめます。
このシートの末尾には、算定方法、表示や顧客要件、調達条件、費用と役割分担を個別に確認する項目があります。自社に当てはめる際は、項目ごとに確認先を添えて使います。
商品化全体の検討項目は、カーボンオフセットを商品化する際の解説にもまとめています。
架空の配送サービスで記入を考える
以下はシートの記入例に沿った架空の企画です。実在の顧客、販売実績、取引や達成した環境効果を示すものではありません。
対象配送と含めない範囲は未定
配送サービスの提供に伴う排出を対象にする案があるとします。この段階では、どの配送を対象とし、どの排出を含めないかは決まっていません。
この架空例では、販売する配送の名称を決めたことだけでは、どの活動の排出を対象にするかは決まりません。対象の候補と含めない範囲を、算定担当者と確認する必要があります。
販売元は、販売単位として数える配送と、算定対象に含める活動を別々に書きます。対象配送の条件が曖昧なままだと、後の集計担当者がどの記録を取り出すべきか判断できません。
対象の条件を詰めるときは、販売記録に残る情報と、算定に必要な情報が一致するかを確認します。販売記録にない情報が必要なら、誰から入手できるかを検討事項として残します。
配送距離などの活動量データと計算方法は確認中と記します。算定責任者を決め、対象範囲とデータが対応しているか確認するまでは、未確認値を表示に使いません。
販売実績と調達時期をつなぐ
記入例では、対象配送を月ごとに集計する案を置いています。取消の扱いは未定なので、販売元と集計担当者が確認し、集計対象の条件を決める必要があります。
実績確認後に候補の在庫と条件を照会する案も記されています。照会前の段階では、購入量、価格、納期や無効化の時期を確約しません。
販売時点でクレジットをまだ調達していない場合、環境省のガイドラインは、調達する時期と購入者に知らせる手段を広告時点で明示するよう求めています。販売元は実績集計後の調達時期と通知方法を決め、未実施の段階で実施済みと案内しないようにします。
集計の締め方や担当者が決まれば、算定に使う対象数を取り出しやすくなります。予定と実績に差があった場合や、取消が後から判明した場合の連絡先も整理しておきます。
表示案は未承認のまま確認に回す
シートには「対象配送の排出をオフセット」という表示案があります。これは架空の企画の未承認案であり、そのまま使える完成文言ではありません。
販売元は、対象配送の条件、対象排出の範囲、算定根拠と無効化の事実を確認したうえで、法務や広報などの確認者に案を渡します。実施前の予定と実施済みの事実も区別します。
販売元と算定担当者が対象範囲について異なる理解を持っている場合は、その違いを先に解消します。表示案に必要な言葉は、対象範囲が決まることで具体化できます。
表示を確認する人には、販売画面だけでなく、顧客へ渡す案内や営業資料に載せる説明も共有します。企画が変更されたときに、どの文言が影響を受けるか確認できるようにするためです。
次の行動は、販売元が対象範囲を決め、算定担当者と表示確認者を指定することです。範囲や証拠が揃う前に表現だけを完成させないことが、この例から確認できる点です。

必要量の参考計算と調達条件を整理する
原単位と対象販売数から参考値を出す
原単位は、ここでは販売単位あたりの対象排出量を表します。シートの参考計算は、確認済み原単位(t-CO2e/販売単位)に対象販売数を掛け、参考必要量(t-CO2e)を表示する仕組みです。
カーボンリンクは、この積を購入量や無効化量の約束ではなく、確認後の検討に使う参考値として置いています。計算前に、算定方法と確認者を定め、対象販売数が予定か実績かを明記します。
対象販売数の欄には、シートの販売単位と同じ単位で数を入れます。複数の商品をまとめる際は、同じ原単位を使えるという前提を置いてよいか、先に算定担当者に確認します。ひとつの原単位を複数の販売に適用できるかは、対象範囲や活動の違いに応じて確認が必要です。原単位の対象と販売数の数え方が食い違えば、計算式が動いても意味のある比較はできません。
原単位の確認日と対象期間を記録しておくと、次に同じ計算を行う際、前提を更新すべきか判断しやすくなります。新しい対象が加わる場合は、従来の原単位をそのまま適用できるか確認します。
参考値をもとに候補を照会するときも、必要な手続き、適用条件や端数の扱いを関係者に確認します。シートの計算結果だけを購入指示として扱わないようにします。

在庫、価格、納期は候補ごとに確認する
シートに記す由来、地域、予算、希望時期は、調達先に相談するための条件です。希望に合うクレジットがその時点で利用できるか、提示条件で取引できるかは別途確認します。候補の照会では、希望時期を伝えるだけでなく、回答が必要な期限と、その後に必要な社内確認も整理します。回答を受けてから契約や実施までに必要な手順は、個別の条件に応じて確認します。
調達条件を比べる際は、価格だけでなく、対象とする用途、必要な証拠、手続きにかかる時間、契約上の役割も確認します。販売時期と実績集計の時期が離れる場合は、調達や無効化の予定を関係者で共有します。
希望する条件が揃わない場合は、企画上どの条件が必須で、どれが希望なのかを販売元で整理します。条件を変更する前には、その変更が顧客への説明や利用先の要件に影響するかも確認します。
東京証券取引所にはカーボン・クレジット市場があります。市場の存在は選択肢を調べる手がかりですが、案内ページだけで、個別の在庫や現在の価格、希望どおりの納期を確認したことにはなりません。
無効化と証拠の保管者を決める
オフセットに用いるクレジットについては、利用目的に応じた無効化の手続きと証拠を確認します。シートには、調達と無効化の依頼者、実行者、時期を書く欄があります。販売元が外部に手続きを依頼する場合は、依頼内容と実行結果の連絡先を明確にします。依頼した事実と手続きが完了した事実は別に記録し、完了の確認に使う資料を確かめます。
必要な証拠の候補には、無効化通知書、取引書類、販売実績、算定根拠があります。どの資料が必要かは手続きや利用目的によって確認し、それぞれの保管者を決めます。
保管場所は、資料を後から参照できる担当者と管理方法を定めておきます。書類を受け取る部署と顧客からの問い合わせを受ける部署が異なる場合は、必要な情報を渡す窓口も決めます。
カーボンリンクのシートでは、証拠の保管者と表示の確認者を同じ企画の中で指定します。後で表示を確認する人が、対象数と無効化の資料をたどれるようにするためです。
無効化に関する証明資料の見方は、J-クレジットの無効化証明に関する解説も参照できます。

顧客に伝える内容と社内の確認者を決める
表示する対象と実施状況を明確にする
顧客向けの表示では、どの商品やサービスの、どの排出を対象にするかを明確にします。対象外の活動がある場合は、全体を対象とする印象を与えないか確認します。
実施を予定している段階と、必要な手続きが済んだ段階では、伝えられる事実が異なります。表示案には作成時点を付け、対象範囲、算定根拠、販売実績と証拠に照らして確認します。表現に使う言葉が、顧客にどの範囲の成果を想像させるかも検討します。本文の細かな説明だけで限定するのではなく、見出しや短い案内を含めて、対象と実施状況を読み取れるか確認します。
クレジットを用いた埋め合わせと、商品自体の排出削減や第三者認証は、それぞれ異なる事項です。実施内容を超える表現にならないか、販売元、法務、広報や専門家が確認します。
販売元と購入者の双方がオフセットを主張する設計なら、誰にどれだけのオフセット量が帰属するかも定めます。同じクレジットによる重複した主張を避けるため、環境省のガイドラインは主体ごとの帰属量を明確にするよう求めています。
環境省は2026年3月31日に環境表示ガイドラインの更新を公表しています。実際に使う文言は、最新の資料と個別の事実関係に照らして確認してください。
証拠と表示案を担当者に結び付ける
確認の順序は、販売元の体制に合わせて決めます。たとえば算定の前提に変更があれば表示の確認者にも知らせ、承認済みの文言に影響するかを検討します。
表示の確認者には、販売元、法務、広報、必要な専門家と最終承認者を記入します。役職だけでなく実際に確認する人を明確にすれば、対象範囲や文言について質問が出たときに戻り先がわかります。
保管者には、販売実績、算定根拠、取引書類、無効化に関する資料の所在を確認します。表示担当者が宣伝文だけを見ても、対象数と証拠の対応までは確かめられないためです。
最終承認に回す資料には、表示文言とともに、算定の前提や証拠の所在を添えます。担当者間で確認依頼の範囲が異なると、表現だけが承認され、事実関係の確認が残る場合があるためです。
クレジットの条件や商品内容が変わった場合は、誰が表示を再確認し、どの資料を更新するかも決めます。確認済みの状態は、その時点の前提に対する記録として扱います。
顧客や利用先の要件を個別に確かめる
法人顧客やプログラムへの報告を想定する場合、求められる対象範囲、算定方法、証拠や表示の条件は利用先ごとに確認が必要です。商品にJ-クレジットを組み込んだことだけから、相手先の要件を満たすとは判断できません。
相手先の要件が書面で示されている場合は、該当する文書と確認日を残します。問い合わせで得た回答についても、どの企画内容を前提とした回答かがわかる形で共有します。
確認依頼には、対象活動、計算の前提、予定するクレジットの条件、無効化の扱いと表示案を添えます。利用先から回答を得た後に条件が変われば、変更後の内容で確認します。顧客から証拠の提出を求められる場合は、何を、いつ、誰が渡せるかを事前に確認します。提供できる資料の範囲が決まっていなければ、その点を未決定事項として営業担当者にも共有します。
環境省はカーボンオフセットに関する考え方や施策を公開しています。制度資料は判断の出発点として使い、実際の商品への適用は販売元が関係者と個別に確認します。
出典:我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(第4版)|環境省
よくある質問(FAQ)
Q. シートは無料で使えますか?
はい。記事冒頭のリンクからExcel版とPDF版を無料で利用できます。
Excel版は入力と参考計算、PDF版は閲覧や印刷に使えます。
カーボンリンクの商品開発の相談・見積もりも無料です。ご発注後の初期構築やクレジット調達などの範囲と費用は、個別の見積もりで確認してください。
Q. 未決定の項目があっても記入できますか?
はい。わからない欄は空欄のまま進められます。
状態欄を使う場合、確認先が決まっていない項目と、確認先に回答を依頼している項目を区別してメモすると、次に必要な連絡を見つけやすくなります。
確認中の事項と担当者、期限を残しておくと、次の打ち合わせで確認できます。空欄を推測値で埋め、確定情報として扱わないようにします。
Q. 参考必要量が出れば購入量も決まりますか?
いいえ。参考計算の結果だけでは購入量や無効化量は確定しません。
参考値は、確認済みの原単位と入力した販売数が対応することを前提にした積です。対象範囲や集計期間が変わった場合は、入力を更新する前に算定担当者へ確認します。
原単位と対象販売数の前提を確認し、利用目的や調達条件、必要な手続きを関係者と個別に確認します。予定数を使った結果は、実績が確定した後に見直します。
Q. 記入例の表示文言をそのまま使えますか?
いいえ。記入例は架空の配送サービスについての未承認案で、そのまま実際の商品に使えません。
実際の商品では、対象範囲、算定根拠、実施状況と無効化の証拠を確認し、販売元の法務や広報などによる審査を経て文言を決めます。
表示案を確認に回す前に、案の作成時点と変更履歴を担当者間で共有します。未承認の文言が先に販促資料へ転記されないよう、確認手順も決めます。
確認者の修正が実際の表示に反映されたかを確認します。販売画面や案内など掲載場所が複数ある場合は、それぞれが同じ対象と実施状況を説明しているか確かめます。
Q. シートだけで排出量算定や法務確認を終えられますか?
いいえ。シートは確認事項を整理する企画資料です。
相談時には、記入済みの項目に加え、対象が未定の箇所や入手できていないデータを示します。確認の依頼先が、企画の前提と不足情報を把握しやすくなります。
排出量の算定や結果の検証、環境表示の適否、契約条件は、内容に応じて算定担当者や法務などの専門家と確認します。手順全体はカーボンオフセットの進め方も参考になります。
まとめ
J-クレジットを商品やサービスに組み込む企画では、販売単位と対象排出を分け、算定根拠、販売実績、調達条件、無効化の証拠と表示の確認者をつなげて整理します。
企画の準備では、記入した人だけが前提を知っている状態を避け、確認先が必要な資料にたどり着けるようにします。対象や提供内容を変更した場合は、算定と表示に影響するかを再確認します。
無料シートは、Excel版で入力と参考計算を行い、PDF版で項目を閲覧または印刷できます。未決定の欄は空欄として残し、担当者と期限を決めて確認を進めてください。
購入量、価格、納期、環境表示の適否はシートだけでは確定しません。算定、調達、表示に必要な確認を行ったうえで、商品化の範囲と役割分担を決めます。
編集部注:シートの項目と架空の記入例はカーボンリンクの企画設計シートを参照。制度や表示の説明は本文中にリンクした環境省および日本取引所グループの公開資料に基づきます。個別の適用条件は最新資料と関係者への確認が必要です。