J-クレジットの売り方には、①「売り出しクレジット一覧」への掲載による相対取引、②東証カーボン・クレジット市場での売却、③仲介・買取事業者への売却、という3つのルートがあります。売却は最終的にすべてJ-クレジット登録簿システム上の口座間移転で完了しますが、買い手を見つける方法と価格の決め方はルートごとに異なります。
本記事では、省エネ設備・太陽光発電・森林経営などで自らクレジットを創出した企業・団体が、そのクレジットを実際に売却する手順を解説します。2026年度にGX-ETS(排出量取引制度)が義務化フェーズに入り、適格クレジットとしてJ-クレジットの需要が拡大していることも踏まえ、3つの売却ルートそれぞれの申請方法・必要書類・手数料の有無、そして自社に合うルートの選び方まで、実務目線で整理します。
この記事を読むことで、自社が創出したJ-クレジットをどこで・どうやって・いくらで売れるのかを判断し、必要な準備を迷わず進められるようになります。
- 3つの売却ルート(相対取引・東証市場・仲介買取事業者)の違いと選び方
- 「売り出しクレジット一覧」への掲載に必要な書類と申請の流れ
- 東証カーボン・クレジット市場に参加者登録し、売り注文を出すまでの手順
- 仲介型プロバイダーと買取型事業者の違い、買取事業者を選ぶ際の確認ポイント
- 創出したクレジットを売却した側に生じる「加算ルール」と森林・バイオ炭由来の例外
J-クレジットの売却とは?知っておきたい基礎知識
売却の具体的な手順に入る前に、「そもそも売却とは何をする行為なのか」を押さえておきましょう。買い手探しの方法が3つに分かれる一方、売却が成立する仕組み自体は共通しています。
売却は「登録簿システム上の口座間移転」で成立する
J-クレジットは物理的なモノではなく、J-クレジット登録簿システム上のデータとして口座に記録されている環境価値です。売却とは、この口座間でクレジットを移転する手続きを指します。買い手・売り手のいずれも、あらかじめJ-クレジット登録簿システムに管理口座を開設していることが前提になります(仲介・買取事業者に取引を任せる場合の実務は後述します)。
口座開設の対象は法人・地方自治体等で、履歴事項全部証明書と印鑑証明書(いずれも発行日から3か月以内)を提出し、申請から開設まで2週間程度かかります。個人名義での口座開設はできません。売却を思い立ってから口座がないことに気づくと、この2週間がボトルネックになります。創出時点で自社が口座を持っているか、複数の事業所で口座が分かれていないかを早めに確認しておくことが実務上のポイントです。
売却できる数量の単位と、売却の前提となる認証
J-クレジットは1t-CO2単位で発行・移転されます。売却量に端数がある場合も1トン単位で調整が必要です。
また、実際に売却(移転)できるのは、認証手続きが完了し、登録簿上で自社の口座に記録されているクレジットに限られます。認証がまだ完了していない(審査中の)状態でも、後述する「売り出しクレジット一覧」には認証予定として掲載できますが、実際の移転が完了するのは認証後です。創出の申請手続き自体についてはJ-クレジットの創出方法で解説していますので、本記事ではクレジットが創出済み・認証済みであることを前提に、売却の実務を解説します。
なお、保有するクレジットの一部だけを売却し、残りを自社のカーボン・オフセット宣言やCSR発信のために保有し続けることも可能です。複数年度・複数プロジェクトのクレジットが同じ口座に混在している場合は、どの認証番号のクレジットをどれだけ売却するのかを事前に整理しておくと、後述するどのルートを選んでも手続きがスムーズになります。
売却する側に生じる「加算ルール」を先に知っておく
売却を検討する際に見落とされがちなのが、売り手側の温対法(地球温暖化対策推進法)上の取り扱いです。自ら創出したJ-クレジットを他者へ移転(売却)した場合、温対法の特定排出者に該当する企業は、その量を自社の調整後排出量に加算しなければなりません。省エネ設備由来などのクレジットを売却して収益化する場合、特定排出者であればこの加算を織り込んでおく必要があります。
ただし、森林の整備・保全による吸収由来(令和4年度報告から)とバイオ炭の農地施用による貯留由来(令和5年度報告から)のクレジットは、加算の対象から除外されています。加算ルールの計算式や環境省Q&Aの詳細は調整後排出量とは?J-クレジットで減らす計算式と温対法報告の実務で解説していますので、自社が特定排出者に該当する場合は事前に確認しておいてください。本記事の後半「売却前に確認すべき注意点」でも改めて整理します。
出典:Q&A(調整後温室効果ガス関係)|温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(環境省)
J-クレジットの売却ルートは3つ(比較表つき)
J-クレジットの売却方法は、制度事務局が案内する枠組みで大きく3つに整理できます。それぞれ、買い手を見つける方法と価格の決め方が異なります。

ルート①相対取引:「売り出しクレジット一覧」への掲載
制度事務局の公式サイトに、クレジットの種類・売出量・希望価格・連絡先を掲載し、購入希望者から直接連絡してもらう方法です。掲載自体は無料で、価格は購入者との相対取引(直接交渉)で決まります。認証済みのクレジットだけでなく、審査中で認証予定のクレジットも「認証予定のクレジット一覧」に掲載できるため、認証完了前から買い手を探し始められるのが特徴です。
一方で、制度事務局は価格の案内や売買の仲介・保証を行いません。掲載後は購入希望者からの連絡を待つ形になるため、いつ・いくらで売れるかが確定しないという不確実性があります。
出典:認証済みのクレジット_売り出しクレジット一覧|J-クレジット制度
ルート②東証カーボン・クレジット市場での売却
東京証券取引所が2023年10月11日に開設した市場で、指値注文による競争売買(板寄せ方式)でJ-クレジットを売買する方法です。参加者として登録すれば、市場に売り注文を出すだけで、不特定の買い手と取引できます。2026年6月10日時点で355者が参加者登録を済ませており、価格は日々の板の状況で決まります。
相対取引と異なり、個別に買い手を探して交渉する必要がない一方、参加者登録の手続きに一定の準備が必要で、指値注文が実際に約定するかどうかは市場の状況次第という特徴があります。
出典:市場参加者|カーボン・クレジット市場(日本取引所グループ)
ルート③仲介・買取事業者への売却
J-クレジット・プロバイダーなどの事業者を介して売却する方法です。プロバイダーには、買い手を探して取り次ぐ「仲介型」と、事業者自身がクレジットを買い取る「買取型」があり、どちらも価格・取引条件は相対取引で決まります。プロバイダーは2026年時点で10社が制度に登録されていますが、制度事務局は「プロバイダー登録は信頼性を保証するものではない」と明示しており、取引条件や実績は事業者ごとに個別に確認する必要があります。
3ルート比較表:価格の決め方・スピード・向いているケース
| ①相対取引(売り出し一覧) | ②東証カーボン・クレジット市場 | ③仲介・買取事業者 | |
|---|---|---|---|
| 価格の決め方 | 購入希望者との個別交渉 | 板の指値注文(競争売買) | 事業者との個別交渉(査定) |
| 事前の準備 | 登録簿口座・利用約款同意・掲載申請書 | 参加者登録(必要書類・審査に約1か月) | 特になし(事業者へ相談) |
| 買い手を探す手間 | 掲載後は連絡待ち | 不要(市場に注文を出すだけ) | 不要(事業者側が査定・提示) |
| 売却までの目安 | 買い手が現れるまで変動 | 参加者登録後は当日〜数日 | 査定から数営業日〜数十営業日 |
| 手数料 | 掲載無料 | 現在は登録料等すべて無料 | 事業者による(査定額に内包等) |
| 向いているケース | 時間をかけても希望価格に近づけたい | 継続的・定量的に売却したい | 早く・手間なく確実に売りたい |
自社に合う売却ルートの選び方
3つのルートに優劣はなく、量・スピード・かけられる手間のバランスで選ぶのが実務上の考え方です。

決断ツリーで選ぶ:量・スピード・手間のどれを優先するか
まず、「今すぐ確実に現金化したいか」を起点に考えます。報告期限や資金計画から売却のタイミングが決まっている場合は、事業者による査定・買取が最短ルートです。査定から契約・移転・入金まで事業者側で一括して進むため、価格交渉や書類対応にかける社内の手間を最小化できます。
時間に余裕があり、希望価格にできるだけ近づけたい場合は、相対取引(売り出しクレジット一覧への掲載)が候補になります。買い手からの連絡を待つ形になりますが、価格は自社の希望から交渉を始められます。毎年度、継続的にまとまった量を売却する体制を作りたい場合は、東証カーボン・クレジット市場への参加者登録が向いています。登録後は市場に注文を出すだけで済み、買い手探しの手間が発生しません。
社内の体制も判断材料になります。参加者登録の書類準備や板の状況を見ながらの注文には、一定の事務対応力が必要です。専任の担当者を置きにくい中小規模の創出者であれば、事務手続きを事業者側に任せられる買取型の窓口のほうが、結果として社内の負担が小さくなるケースが多くみられます。
複数ルートを併用するという選択肢
3つのルートは同時に使えないケースがある点に注意が必要です。たとえば、後述する入札販売用に事務局の口座へクレジットを移した場合、その分は「売り出しクレジット一覧」への掲載と同時には行えません。一方で、一覧への掲載と、仲介・買取事業者への個別相談を並行して進めることは可能です。掲載して連絡を待つ間に、買取事業者から査定を取って相場感を確認しておく、という進め方も現実的な選択肢です。
ルート①の手続き詳細:「売り出しクレジット一覧」への掲載方法
掲載の前提:登録簿口座・利用約款・掲載申請書
「売り出しクレジット一覧」に掲載するには、まずJ-クレジット登録簿システムでの口座開設が必須条件です。口座開設が済んでいることを前提に、「売り出しクレジット一覧の利用約款」(PDF)への同意と、「売り出しクレジット一覧への掲載申請書」(Excel)の提出が必要になります。
申請は電子メールで行い、メール件名は「【売り出しクレジット一覧への掲載申請】プロジェクト実施者名」の形式で送付します。複数のプロジェクトを同時に申請する場合は、件数を明記する必要があります。提出先は制度事務局の問い合わせ窓口です。
出典:「売り出しクレジット一覧」への掲載方法|J-クレジット制度
掲載できる情報と、購入希望者との連絡・価格交渉の流れ
一覧には、クレジット識別番号、販売組織(法人・自治体等)、プロジェクト内容(例:森林経営活動、省エネ設備の導入など)、売出量(t-CO2)、希望販売価格(1トンあたりの単価)、販売期限、担当者名・電話番号・メールアドレスといった項目が掲載されます。「100t-CO2以上の購入で割引」といった条件を備考欄に記載することもできます。
購入希望者は、この情報をもとに担当者へ直接連絡し、購入量や価格を相談します。制度事務局は仲介や単価の案内を行わないため、条件のすり合わせから契約書の準備まで、基本的に売り手と買い手の間で進める必要があります。掲載情報は保有者自身が管理・更新でき、売却が進んだ分の数量を随時反映できます。
出典:認証済みのクレジット_売り出しクレジット一覧|J-クレジット制度
半年たっても売れない場合の受け皿(入札販売)
「売り出しクレジット一覧」に掲載しても6か月以上買い手が見つからない場合の受け皿として、制度事務局が案内するフローには「入札販売」が示されています。対象のクレジットを事務局の管理する口座に移し、複数の売り手のクレジットを集約したうえで、大口の購入希望者向けに年1〜2回程度、事務局が販売・売買契約の代行を行うという仕組みです。なお、この口座への預け入れは「売り出しクレジット一覧」への掲載と同時には行えません。
一点補足すると、この入札販売とは別に、かつて経済産業省・制度事務局が実施していた「政府保有クレジットの入札販売」は、東証カーボン・クレジット市場の開設(2023年10月)以降、事務局を窓口とする形では実施されていません。また、6か月未成約分の入札販売についても、参加申込みの詳細を案内するページが本記事執筆時点で確認できませんでした。検討する場合は、最新の運用を制度事務局へ直接確認することをおすすめします。
実務上は、この入札販売による受け皿を待つよりも、6か月という期限が近づいた段階で、一覧の掲載を続けながら仲介・買取事業者へ相談を始めるほうが、売却完了までの時間を短縮できるケースが多いです。「一覧に掲載したが反応がない」という状態を半年近く放置しないよう、掲載後1〜2か月を目安に反応状況を振り返る運用をおすすめします。
ルート②の手続き詳細:東証カーボン・クレジット市場での売り方
市場参加者としての登録要件と必要書類
東証カーボン・クレジット市場に参加するには、「カーボン・クレジット市場参加者」としての登録が必要です。登録できるのは、法人・政府・地方自治体・任意団体のいずれかで、2名以上の役職員が業務に従事する体制、社会的信用と健全な経営体制、債務超過でないこと、代表者・役員に法的な障害がないことなどが要件になります。
決済のために、申込者名義の預貯金口座と、J-クレジット登録簿上のクレジット口座の両方が必要です。加えて、税務上の要件として適格請求書発行事業者としての登録も求められます。必要書類は申込者の区分によって異なり、政府・地方公共団体や上場会社は会社概要・財務書類の提出が不要ですが、その他の法人は会社概要・財務書類・口座情報・適格請求書発行事業者の証明をすべて提出する必要があります。
| 区分 | 会社概要 | 財務書類 | 口座情報 | 請求書発行事業者証明 |
|---|---|---|---|---|
| 政府・地方公共団体 | 不要 | 不要 | 必須 | 必須 |
| 上場会社 | 不要 | 不要 | 必須 | 必須 |
| その他の法人 | 必須 | 必須 | 必須 | 必須 |
出典:市場参加者|カーボン・クレジット市場(日本取引所グループ)
登録から取引開始まで:期間と現在の費用
申請は必要書類をメール(carbon_sankasha@jpx.co.jp)で送付する形式で、毎月末が申請の締切です。締切から審査を経て、約1か月後には取引を開始できるという運用になっています。
費用については、登録料・参加者保証金・基本料・売買手数料・決済手数料の5種類が想定されていますが、本記事執筆時点ではすべて無料です。参加者数は2026年6月10日時点で355者に達しており、開設直後の2023年10月時点(200者超)から着実に増えています。
実際の売り注文の出し方(指値・板寄せ・時間・単位)と決済の仕組み
参加者登録が済んだら、市場システムに注文を入力して売却します。J-クレジットの通常取引では、注文受付時間が平日8:00〜11:29と12:30〜14:59の2つに分かれており、実際に売買が成立する「約定」は1日2回、午前11:30と午後15:00に競争売買(板寄せ方式)で行われます。注文方法は指値注文のみで、価格を指定しない成行注文は出せません。
注文入力では、①売買区分、②売付け・買付けの区別、③(売付け時は)クレジット認証番号、④注文数量(1t-CO2以上)、⑤注文値段、⑥有効期限日(最大30営業日まで設定可能)を指定します。呼値の単位は1円、売買単位は1t-CO2で、値段には制限値幅(直前の約定値段である基準値段の上下90%)が設けられ、範囲を超える注文はエラーとして受け付けられません。
約定後の決済は、約定成立日から起算して6営業日後(T+5)に行われます。決済前日までに売り方が東証へクレジットを移転し、決済日に買い方が東証へ資金を振り込み、その後に東証が売り方への資金振込とクレジットの買い方への移転を実行します。東証が売買両者の間に入ることで、クレジットの移転が実行されなければ資金の決済も行われない(逆も同様)という仕組みになっており、取引相手の履行リスクを個別に負う必要はありません。
出典:制度概要(取引規則)|カーボン・クレジット市場(日本取引所グループ)
ルート③の手続き詳細:仲介・買取事業者への売却
「仲介型」プロバイダーと「買取型」事業者の違い
仲介型のプロバイダーは、売り手のクレジットを購入したい相手を探してマッチングする役割です。買い手が見つかった時点で成約となるため、価格や成約タイミングは買い手側の事情にも左右されます。一方、買取型の事業者は事業者自身が買主になるため、査定価格に同意できれば、買い手探しの過程を経ずに取引が完結します。
早く確実に現金化したい場合は買取型、条件次第では時間をかけてより高い価格を狙いたい場合は仲介型、というのが基本的な向き不向きです。どちらの型であっても、価格や取引条件は事業者との相対取引で決まる点は共通しています。
買取事業者を選ぶときの確認ポイント
制度事務局は「プロバイダー登録は信頼性を保証するものではない」と明示しているため、取引実績や査定基準の透明性は事業者ごとに個別に確認する必要があります。確認したいポイントとしては、査定価格の根拠(相場のどの基準を参照しているか)、登録簿での移転から入金までにかかる期間の明示、これまでの取引実績の開示、代理無効化や無効化通知書といった周辺実務への対応力などが挙げられます。
「相場は分かるが、実際に売った後どのくらいで現金化できるのか」が明確に説明できる事業者を選ぶと、資金計画とのズレを防げます。
当社(カーボンリンク)J-クレジット買取センターの実務フロー

当社のJ-クレジット買取センターでは、査定フォームからクレジットの種類・量・認証番号などの情報を入力いただくと、適正価格を提示し、売買基本契約を締結、登録簿システムでの当社口座への移転を確認した後、原則1か月以内に買取代金を全額振り込む運用です。累計取引額は3.5億円を超えています(2026年6月時点)。
査定実務の所感として、認証番号・保有量・登録簿の口座情報といった基礎情報が事前に整っているほど、査定価格の提示までのスピードが上がります。逆に、口座開設がまだの場合や、複数のプロジェクトのクレジットが混在している場合は、確認事項が増える分、通常より時間がかかる傾向があります。売却を検討し始めた時点で、登録簿の口座状況と認証番号を手元で確認しておくと、その後の手続きがスムーズです。
査定から売買基本契約の締結までは、書類が揃っていれば数営業日で進むことが多く、登録簿での移転確認から入金までを含めた全体の所要は、標準的には5〜20営業日程度を目安にご案内しています。報告期限や決算のタイミングに合わせて売却したい場合は、逆算していつまでに査定を依頼すればよいかを、早い段階でご相談いただくのが確実です。
J-クレジットはいくらで売れる?2026年の価格帯と需要動向
種類別の価格帯とGX-ETS義務化による需要拡大
J-クレジットの価格は種類によって差があり、再エネ電力由来のクレジットは5,000円/t-CO2を超える水準で取引されています。省エネ由来・森林由来はまた別の価格帯を形成しており、目的(温対法対応・CDP/RE100対応・地域貢献のPRなど)によって選ばれる種類も価格帯も変わります。
需要面では、2026年度にGX-ETS(排出量取引制度)が義務化フェーズへ移行し、直接排出量が一定規模以上の事業者に排出枠の遵守義務が課されています。この制度で使用できる適格クレジットはJ-クレジットとJCM(二国間クレジット制度)の2種類のみで、使用上限は各年度の実排出量(クレジット無効化量を控除する前)の10%です。使える種類が絞られたなかで対象企業の調達が進むため、J-クレジット全体の需要を押し上げる方向に働いています。価格の推移や今後の見通しの詳細はJ-クレジット価格の推移と2026年以降の見通しで解説しています。
出典:産業構造審議会 排出量取引制度小委員会 中間整理(案)|経済産業省
当社が毎日公表する参照価格の仕組み
当社では、東証カーボン・クレジット市場の基準値段に連動した参照価格を、平日18時に自動更新して公開しています。買取査定でも、この参照価格をベースラインに、クレジットの種類・量に応じた価格を提示する運用です。売り手側からすると、公開されている参照価格を見れば、査定提示額が市場の水準からどの程度の位置にあるかを自分でも確認できます。創出したクレジットの収益性そのものについては【知らないと損】J-クレジットは儲かる?プロが教える損益分岐点と失敗しない2つの方法も参考にしてください。
売却前に確認すべき注意点(創出者の加算ルール)

温対法の特定排出者は売却分が自社の調整後排出量に加算される
前述のとおり、自ら創出したJ-クレジットを他者へ移転(売却)した場合、その量は自社の調整後排出量に加算されます。たとえば、省エネ由来クレジットを年間300t-CO2創出し、特定排出者である自社の調整後排出量が9,500t-CO2だった年度に全量を売却すると、調整後排出量は9,800t-CO2まで増える計算になります。売却収入と調整後排出量の増加はトレードオフの関係にあるため、特定排出者に該当する創出企業は、売却するかどうかを年度単位で計画的に判断するのが賢明です。
出典:Q&A(調整後温室効果ガス関係)|温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(環境省)
森林由来・バイオ炭由来は加算対象から除外される
一方、森林の整備・保全による吸収由来と、バイオ炭の農地施用による貯留由来のクレジットは、加算の対象から除外されています。これらの種類を創出・売却する企業であれば、売却しても自社の調整後排出量には影響しません。自社が創出したクレジットの種類がどちらに該当するかは、売却前に必ず確認しておきたいポイントです。
移転手続きの実務:処理にかかる時間と確認事項
登録簿システム上の移転そのものはリアルタイムで完了しますが、そこに至るまでの契約内容の確認や、移転先の口座番号・数量の入力には、社内でのチェック体制が必要です。移転は実行後に取り消せないため、契約書に記載された数量・単価と、実際に入力する移転先口座・数量が一致しているかを、実行前に必ず確認してください。ルート②の東証市場のように取引所が間に入る仕組みでは履行リスクが抑えられますが、ルート①・③の相対取引では、移転の実行と資金の受け取りのタイミングを契約書上でどう定めるかが実務上の論点になります。
契約書には、移転を実行する期限(例:契約締結から何営業日以内)と、移転確認後の支払い期限の両方を明記しておくことをおすすめします。「先に移転してしまい、資金の受け取りが遅れる」というトラブルを避けるには、移転の実行タイミングと支払いタイミングの前後関係を、口頭の約束ではなく契約書の条文として残しておくことが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. J-クレジットはどこで売れますか?
大きく3つの窓口があります。制度事務局の「売り出しクレジット一覧」に掲載して購入希望者からの連絡を待つ相対取引、東証カーボン・クレジット市場に参加者登録して売り注文を出す方法、そしてJ-クレジット・プロバイダーなどの仲介・買取事業者に売却する方法です。量・スピード・かけられる手間のバランスで選ぶのが実務的な考え方です。
Q. 個人でもJ-クレジットを売却できますか?
J-クレジット登録簿システムの口座開設は法人・地方自治体等が対象で、個人名義での口座開設はできません。そのため、個人が東証カーボン・クレジット市場に直接参加したり、「売り出しクレジット一覧」に個人名義で掲載したりすることは想定されていません。個人がクレジットの創出に関わっている場合でも、実務上は法人(組合等)を通じて登録簿を管理するか、仲介・買取事業者に相談する形が現実的な窓口になります。
Q. 売却にかかる期間はどのくらいですか?
ルートによって変わります。「売り出しクレジット一覧」は買い手が現れるまでの期間が読みにくく、東証カーボン・クレジット市場は参加者登録(申請から約1か月)が済めば当日〜数日で約定できます。仲介・買取事業者への売却は、査定から契約・移転・入金まで数営業日〜数十営業日が目安です。当社の買取センターでは、査定から移転確認・入金まで原則1か月以内で対応しています。
Q. 売却時に手数料はかかりますか?
東証カーボン・クレジット市場は、登録料・参加者保証金・基本料・売買手数料・決済手数料のすべてが本記事執筆時点で無料です。「売り出しクレジット一覧」への掲載も無料です。仲介・買取事業者を利用する場合は、成約時の手数料や査定価格への内包など、事業者によって条件が異なるため、事前に確認してください。
Q. 売却したクレジットは加算されると聞きましたが、必ず増えるのですか?
温対法の特定排出者に該当する企業が、自ら創出したクレジットを売却した場合に、その量が自社の調整後排出量に加算される仕組みです。特定排出者に該当しない企業には直接関係しません。また、該当する場合でも、森林由来・バイオ炭由来のクレジットは加算の対象から除外されているため、必ず増えるわけではありません。
まとめ
J-クレジットの売却には、相対取引(売り出しクレジット一覧)・東証カーボン・クレジット市場・仲介買取事業者という3つのルートがあり、価格の決め方とスピードのバランスが異なります。要点を整理します。
- ルート①相対取引は掲載無料・価格は個別交渉、買い手探しに時間がかかる場合がある
- ルート②東証カーボン・クレジット市場は参加者登録(約1か月)後、指値注文で不特定多数と取引できる
- ルート③仲介・買取事業者は査定から契約・移転・入金まで一括で進み、早く確実に現金化したい場合に向く
- 特定排出者が創出クレジットを売却すると調整後排出量に加算される(森林・バイオ炭由来は例外)
- 登録簿の口座状況・認証番号を事前に確認しておくと、どのルートでも手続きがスムーズ
当社のJ-クレジット買取センターでは、累計3.5億円超の取引実績をもとに、査定から売買契約・登録簿での移転確認・買取代金の振込(原則1か月以内)まで一括で対応しています。売却をご検討の際は、まずは無料査定からご相談ください。

