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J-クレジットの売り方3つを比較|売却ルートと手続きの流れを解説

2026 10/03
J-クレジット
2026年7月7日2026年10月3日
J-クレジットの売り方3つを比較|売却ルートと手続きの流れを解説
監修増山 大知(カーボンリンク株式会社 代表取締役)

J-クレジットの売り方には、①「売り出しクレジット一覧」への掲載による相対取引、②東証カーボン・クレジット市場での売却、③仲介・買取事業者への売却、という3つのルートがあります。売却は最終的にすべてJ-クレジット登録簿システム上の口座間移転で完了しますが、買い手を見つける方法と価格の決め方はルートごとに異なります。

本記事では、省エネ設備・太陽光発電・森林経営などで自らクレジットを創出した企業・団体が、そのクレジットを実際に売却する手順を解説します。2026年度にGX-ETS(排出量取引制度)が義務化フェーズに入り、適格クレジットとしてJ-クレジットの需要が拡大していることも踏まえ、3つの売却ルートそれぞれの申請方法・必要書類・手数料の有無、そして自社に合うルートの選び方まで、実務目線で整理します。

この記事を読むことで、自社が創出したJ-クレジットをどこで・どうやって・いくらで売れるのかを判断し、必要な準備を迷わず進められるようになります。

この記事を読むとわかること
  • 3つの売却ルート(相対取引・東証市場・仲介買取事業者)の違いと選び方
  • 「売り出しクレジット一覧」への掲載に必要な書類と申請の流れ
  • 東証カーボン・クレジット市場に参加者登録し、売り注文を出すまでの手順
  • 仲介型プロバイダーと買取型事業者の違い、買取事業者を選ぶ際の確認ポイント
  • 創出したクレジットを売却した側に生じる「加算ルール」と森林・バイオ炭由来の例外

売却ルートを比べたら、具体的な条件へ

直接買取の条件を相談する →
目次

J-クレジットの売却とは?知っておきたい基礎知識

売却の具体的な手順に入る前に、「そもそも売却とは何をする行為なのか」を押さえておきましょう。買い手探しの方法が3つに分かれる一方、売却が成立する仕組み自体は共通しています。

売買契約・登録簿移転・入金は別の段階

J-クレジットは登録簿システム上の口座に記録されます。売買契約で価格や数量を合意しても、登録簿の移転と代金の支払いは別の段階です。自社で直接売買する場合は、移転元と移転先の口座を確認します。買取事業者へ売る場合は、その事業者への移転先と、移転確認後の支払条件を契約で確認してください。

口座開設の対象は法人・地方自治体等で、履歴事項全部証明書と印鑑証明書(いずれも発行日から3か月以内)を提出し、申請から開設まで2週間程度かかります。個人名義での口座開設はできません。売却を思い立ってから口座がないことに気づくと、この2週間がボトルネックになります。創出時点で自社が口座を持っているか、複数の事業所で口座が分かれていないかを早めに確認しておくことが実務上のポイントです。

出典:クレジット管理用口座|J-クレジット制度

売却できる数量の単位と、売却の前提となる認証

J-クレジットは1t-CO2単位で発行・移転されます。売却量に端数がある場合も1トン単位で調整が必要です。

また、実際に売却(移転)できるのは、認証手続きが完了し、登録簿上で自社の口座に記録されているクレジットに限られます。認証がまだ完了していない(審査中の)状態でも、後述する「売り出しクレジット一覧」には認証予定として掲載できますが、実際の移転が完了するのは認証後です。創出の申請手続き自体についてはJ-クレジットの創出方法で解説していますので、本記事ではクレジットが創出済み・認証済みであることを前提に、売却の実務を解説します。

なお、保有するクレジットの一部だけを売却し、残りを自社のカーボン・オフセット宣言やCSR発信のために保有し続けることも可能です。複数年度・複数プロジェクトのクレジットが同じ口座に混在している場合は、どの認証番号のクレジットをどれだけ売却するのかを事前に整理しておくと、後述するどのルートを選んでも手続きがスムーズになります。

売却する側に生じる「加算ルール」を先に知っておく

売却を検討する際に見落とされがちなのが、売り手側の温対法(地球温暖化対策推進法)上の取り扱いです。自ら創出したJ-クレジットを他者へ移転(売却)した場合、温対法の特定排出者に該当する企業は、その量を自社の調整後排出量に加算しなければなりません。省エネ設備由来などのクレジットを売却して収益化する場合、特定排出者であればこの加算を織り込んでおく必要があります。

ただし、森林の整備・保全による吸収由来(令和4年度報告から)とバイオ炭の農地施用による貯留由来(令和5年度報告から)のクレジットは、加算の対象から除外されています。加算ルールの計算式や環境省Q&Aの詳細は調整後排出量とは?J-クレジットで減らす計算式と温対法報告の実務で解説していますので、自社が特定排出者に該当する場合は事前に確認しておいてください。本記事の後半「売却前に確認すべき注意点」でも改めて整理します。

出典:Q&A(調整後温室効果ガス関係)|温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(環境省)

J-クレジットの売却ルートは3つ(比較表つき)

J-クレジットの売却方法は、制度事務局が案内する枠組みで大きく3つに整理できます。それぞれ、買い手を見つける方法と価格の決め方が異なります。

出典:売却方法(売りたい方)|J-クレジット制度

J-クレジット売却の相対取引、東証市場、仲介買取事業者の三つの窓口

ルート①相対取引:「売り出しクレジット一覧」への掲載

制度事務局の公式サイトに、クレジットの種類・売出量・希望価格・連絡先を掲載し、購入希望者から直接連絡してもらう方法です。掲載自体は無料で、価格は購入者との相対取引(直接交渉)で決まります。認証済みのクレジットだけでなく、審査中で認証予定のクレジットも「認証予定のクレジット一覧」に掲載できるため、認証完了前から買い手を探し始められるのが特徴です。

一方で、制度事務局は価格の案内や売買の仲介・保証を行いません。掲載後は購入希望者からの連絡を待つ形になるため、いつ・いくらで売れるかが確定しないという不確実性があります。

出典:認証済みのクレジット_売り出しクレジット一覧|J-クレジット制度

ルート②東証カーボン・クレジット市場での売却

東京証券取引所が2023年10月11日に開設した市場で、指値注文による競争売買(板寄せ方式)でJ-クレジットを売買する方法です。参加者として登録すれば、市場に売り注文を出すだけで、不特定の買い手と取引できます。2026年6月10日時点で355者が参加者登録を済ませており、価格は日々の板の状況で決まります。

相対取引と異なり、個別に買い手を探して交渉する必要がない一方、参加者登録の手続きに一定の準備が必要で、指値注文が実際に約定するかどうかは市場の状況次第という特徴があります。

出典:市場参加者|カーボン・クレジット市場(日本取引所グループ)

ルート③仲介・買取事業者への売却

売買や仲介を行う民間事業者へ相談する方法です。登録プロバイダーと民間の仲介、買取は同義ではありません。仲介では買い手探し、直接買取では事業者自身の査定と契約が必要です。どちらも提示額や売却成立日は個別条件で決まります。登録状況は制度事務局の公式一覧で確認してください。

出典:J-クレジット・プロバイダー|J-クレジット制度

3ルート比較表:価格の決め方・スピード・向いているケース

①相対取引(売り出し一覧) ②東証カーボン・クレジット市場 ③仲介・買取事業者
価格の決め方 購入希望者との個別交渉 板の指値注文(競争売買) 事業者との個別交渉(査定)
事前の準備 登録簿口座・利用約款同意・掲載申請書 参加者登録(必要書類・審査期間を申請時に確認) 特になし(事業者へ相談)
買い手を探す手間 掲載後は連絡待ち 不要(市場に注文を出すだけ) 不要(事業者側が査定・提示)
売却までの目安 買い手が現れるまで変動 注文の約定日による(不成立もある) 契約と移転・入金条件による
手数料 掲載無料 現在は登録料等すべて無料 事業者による(査定額に内包等)
向いているケース 時間をかけても希望価格に近づけたい 継続的・定量的に売却したい 査定条件を比較し、直接売却を検討したい

売却ルートを比べたら、具体的な条件へ

直接買取の条件を相談する →

自社に合う売却ルートの選び方

3つのルートに優劣はなく、量・スピード・かけられる手間のバランスで選ぶのが実務上の考え方です。

J-クレジット売却ルートを選ぶ前に確認するロット、価格、契約と支払の条件

決断ツリーで選ぶ:量・スピード・手間のどれを優先するか

売却の希望時期、最低希望価格、保有クレジットの種類と量から経路を比べます。買取事業者に査定を依頼すると個別の買い手探しを省ける場合がありますが、査定の提示は買取や入金の保証ではありません。契約条件と登録簿移転後の支払条件を確認してください。買取と査定の判断材料も参照できます。

売却ルートを比べる前に手元で確認する情報

売り出し一覧への掲載、市場への注文、事業者への査定では必要な手続きが異なります。比較に使うクレジットは、種類と方法論、認証番号、保有数量、売却可能な数量、保有口座名義を同じ単位で整理してください。希望する移転時期と、価格の決め方や支払時期の希望も分けて伝えます。

事業者への査定を選ぶ場合は、その事業者が自ら買い取るのか、買い手を探して仲介するのかを先に確認します。直接買取を行うカーボンリンクの公表手順では、査定後に契約し、登録簿での移転確認後に契約条件に基づいて支払います。査定の表示価格は成約価格ではありません。出典:J-クレジット買取センター|カーボンリンク

相対取引では希望価格から交渉できますが、掲載だけで買い手は確保されません。東証市場では参加者登録と注文が必要で、注文が約定しなければ売却は成立しません。各経路の価格、準備時間、成立可能性を分けて比較してください。仲介会社の選び方と公開価格指標も参考になります。

社内の体制も判断材料になります。参加者登録の書類準備や板の状況を見ながらの注文には、一定の事務対応力が必要です。専任の担当者を置きにくい中小規模の創出者であれば、事務手続きを事業者側に任せられる買取型の窓口のほうが、結果として社内の負担が小さくなるケースが多くみられます。

複数ルートを併用するという選択肢

3つのルートは同時に使えないケースがある点に注意が必要です。たとえば、後述する入札販売用に事務局の口座へクレジットを移した場合、その分は「売り出しクレジット一覧」への掲載と同時には行えません。一方で、一覧への掲載と、仲介・買取事業者への個別相談を並行して進めることは可能です。掲載して連絡を待つ間に、買取事業者から査定を取って相場感を確認しておく、という進め方も現実的な選択肢です。

ルート①の手続き詳細:「売り出しクレジット一覧」への掲載方法

掲載の前提:登録簿口座・利用約款・掲載申請書

「売り出しクレジット一覧」に掲載するには、まずJ-クレジット登録簿システムでの口座開設が必須条件です。口座開設が済んでいることを前提に、「売り出しクレジット一覧の利用約款」(PDF)への同意と、「売り出しクレジット一覧への掲載申請書」(Excel)の提出が必要になります。

申請は電子メールで行い、メール件名は「【売り出しクレジット一覧への掲載申請】プロジェクト実施者名」の形式で送付します。複数のプロジェクトを同時に申請する場合は、件数を明記する必要があります。提出先は制度事務局の問い合わせ窓口です。

出典:「売り出しクレジット一覧」への掲載方法|J-クレジット制度

掲載できる情報と、購入希望者との連絡・価格交渉の流れ

一覧には、クレジット識別番号、販売組織(法人・自治体等)、プロジェクト内容(例:森林経営活動、省エネ設備の導入など)、売出量(t-CO2)、希望販売価格(1トンあたりの単価)、販売期限、担当者名・電話番号・メールアドレスといった項目が掲載されます。「100t-CO2以上の購入で割引」といった条件を備考欄に記載することもできます。

購入希望者は、この情報をもとに担当者へ直接連絡し、購入量や価格を相談します。制度事務局は仲介や単価の案内を行わないため、条件のすり合わせから契約書の準備まで、基本的に売り手と買い手の間で進める必要があります。掲載情報は保有者自身が管理・更新でき、売却が進んだ分の数量を随時反映できます。

出典:認証済みのクレジット_売り出しクレジット一覧|J-クレジット制度

半年たっても売れない場合の受け皿(入札販売)

「売り出しクレジット一覧」に掲載しても6か月以上買い手が見つからない場合の受け皿として、制度事務局が案内するフローには「入札販売」が示されています。対象のクレジットを事務局の管理する口座に移し、複数の売り手のクレジットを集約したうえで、大口の購入希望者向けに年1〜2回程度、事務局が販売・売買契約の代行を行うという仕組みです。なお、この口座への預け入れは「売り出しクレジット一覧」への掲載と同時には行えません。

一点補足すると、この入札販売とは別に、かつて経済産業省・制度事務局が実施していた「政府保有クレジットの入札販売」は、東証カーボン・クレジット市場の開設(2023年10月)以降、事務局を窓口とする形では実施されていません。また、6か月未成約分の入札販売についても、参加申込みの詳細を案内するページが本記事執筆時点で確認できませんでした。検討する場合は、最新の運用を制度事務局へ直接確認することをおすすめします。

実務上は、この入札販売による受け皿を待つよりも、6か月という期限が近づいた段階で、一覧の掲載を続けながら仲介・買取事業者へ相談を始めるほうが、売却完了までの時間を短縮できるケースが多いです。「一覧に掲載したが反応がない」という状態を半年近く放置しないよう、掲載後1〜2か月を目安に反応状況を振り返る運用をおすすめします。

出典:売却方法(売りたい方)|J-クレジット制度

ルート②の手続き詳細:東証カーボン・クレジット市場での売り方

市場参加者としての登録要件と必要書類

東証カーボン・クレジット市場に参加するには、「カーボン・クレジット市場参加者」としての登録が必要です。登録できるのは、法人・政府・地方自治体・任意団体のいずれかで、2名以上の役職員が業務に従事する体制、社会的信用と健全な経営体制、債務超過でないこと、代表者・役員に法的な障害がないことなどが要件になります。

決済のために、申込者名義の預貯金口座と、J-クレジット登録簿上のクレジット口座の両方が必要です。加えて、税務上の要件として適格請求書発行事業者としての登録も求められます。必要書類は申込者の区分によって異なり、政府・地方公共団体や上場会社は会社概要・財務書類の提出が不要ですが、その他の法人は会社概要・財務書類・口座情報・適格請求書発行事業者の証明をすべて提出する必要があります。

区分 会社概要 財務書類 口座情報 請求書発行事業者証明
政府・地方公共団体 不要 不要 必須 必須
上場会社 不要 不要 必須 必須
その他の法人 必須 必須 必須 必須

出典:市場参加者|カーボン・クレジット市場(日本取引所グループ)

取引開始前の登録要件と費用

東証市場の参加には、市場参加者登録と必要書類の提出、審査が必要です。申請窓口・締切・審査期間は申請時点の日本取引所グループ案内で確認してください。クレジット管理用口座の開設や売却ロットの移転準備も別に必要です。希望する売却日から逆算し、登録と受渡の条件を先に確認します。

費用については、登録料・参加者保証金・基本料・売買手数料・決済手数料の5種類が想定されていますが、本記事執筆時点ではすべて無料です。参加者数は2026年6月10日時点で355者に達しており、開設直後の2023年10月時点(200者超)から着実に増えています。

実際の売り注文の出し方(指値・板寄せ・時間・単位)と決済の仕組み

参加者登録が済んだら、市場システムに注文を入力して売却します。J-クレジットの通常取引では、注文受付時間が平日8:00〜11:29と12:30〜14:59の2つに分かれており、実際に売買が成立する「約定」は1日2回、午前11:30と午後15:00に競争売買(板寄せ方式)で行われます。注文方法は指値注文のみで、価格を指定しない成行注文は出せません。

注文入力では、①売買区分、②売付け・買付けの区別、③(売付け時は)クレジット認証番号、④注文数量(1t-CO2以上)、⑤注文値段、⑥有効期限日(最大30営業日まで設定可能)を指定します。呼値の単位は1円、売買単位は1t-CO2で、値段には制限値幅(直前の約定値段である基準値段の上下90%)が設けられ、範囲を超える注文はエラーとして受け付けられません。

約定後の決済は、約定成立日から起算して6営業日後(T+5)に行われます。決済前日までに売り方が東証へクレジットを移転し、決済日に買い方が東証へ資金を振り込み、その後に東証が売り方への資金振込とクレジットの買い方への移転を実行します。東証が売買両者の間に入ることで、クレジットの移転が実行されなければ資金の決済も行われない(逆も同様)という仕組みになっており、取引相手の履行リスクを個別に負う必要はありません。

出典:制度概要(取引規則)|カーボン・クレジット市場(日本取引所グループ)

ルート③の手続き詳細:仲介・買取事業者への売却

「仲介型」プロバイダーと「買取型」事業者の違い

仲介型のプロバイダーは、売り手のクレジットを購入したい相手を探してマッチングする役割です。買い手が見つかった時点で成約となるため、価格や成約タイミングは買い手側の事情にも左右されます。一方、買取型の事業者は事業者自身が買主になるため、査定価格に同意できれば、買い手探しの過程を経ずに取引が完結します。

直接買取の査定を受けると買い手探しの工程を減らせる場合があります。ただし、買取の可否、価格、入金日は契約条件によって決まります。仲介は相手方の条件を探せる一方、買い手が見つかるまでの期間を確約できません。

買取事業者を選ぶときの確認ポイント

制度事務局は「プロバイダー登録は信頼性を保証するものではない」と明示しているため、取引実績や査定基準の透明性は事業者ごとに個別に確認する必要があります。確認したいポイントとしては、査定価格の根拠(相場のどの基準を参照しているか)、登録簿での移転から入金までにかかる期間の明示、これまでの取引実績の開示、代理無効化や無効化通知書といった周辺実務への対応力などが挙げられます。

「相場は分かるが、実際に売った後どのくらいで現金化できるのか」が明確に説明できる事業者を選ぶと、資金計画とのズレを防げます。

当社(カーボンリンク)J-クレジット買取センターの実務フロー

J-クレジット買取の査定、契約、登録簿移転、移転確認後の代金受領までの四手順

カーボンリンクの買取査定は、認証番号、種類、数量、希望時期などを確認して個別に提示します。査定、売買契約、登録簿移転、入金は別の段階で、買取価格と支払日は契約で確認してください。カーボンリンク公式サイトは、2026年8月時点の炭素クレジット累計取引額を3.5億円超と公表しています。この数値は売買双方を含む自社公表値で、J-クレジットの買取額だけを示すものではありません。出典:カーボンリンク公式サイト

カーボンリンクが公表した2026年8月の買取成約例は、農業160t・100tと再エネ10tの計270t-CO₂です。ただし受渡手続き中の案件を含み、全件の登録簿移転や入金が完了した数量ではありません。査定価格も非公開なので、この270tから売却単価は計算できません。出典:J-クレジット買取センター

査定実務の所感として、認証番号・保有量・登録簿の口座情報といった基礎情報が事前に整っているほど、査定価格の提示までのスピードが上がります。逆に、口座開設がまだの場合や、複数のプロジェクトのクレジットが混在している場合は、確認事項が増える分、通常より時間がかかる傾向があります。売却を検討し始めた時点で、登録簿の口座状況と認証番号を手元で確認しておくと、その後の手続きがスムーズです。

査定、契約、登録簿移転、入金は別の段階です。必要書類と相手方の確認状況で所要日数が変わるため、売却希望日と希望条件を伝え、価格と支払日を契約で確認してください。過去の処理日数や査定の受付だけで入金日を保証することはできません。

J-クレジットはいくらで売れる?2026年の価格帯と需要動向

種類別の価格帯とGX-ETS義務化による需要拡大

J-クレジットの参照価格は種類と日付で変わります。再エネ電力、省エネ、森林を同じ単価として扱わず、東証の当日指標と買取事業者の公開参照価格を確認してください。公開値は個別ロットの成約単価や買取保証額ではありません。認証番号、数量、移転時期を伝えて査定を取り、用途に合う種類と手取り額を分けて比較します。

需要面では、2026年度にGX-ETS(排出量取引制度)が義務化フェーズへ移行し、直接排出量が一定規模以上の事業者に排出枠の遵守義務が課されています。この制度で使用できる適格クレジットはJ-クレジットとJCM(二国間クレジット制度)の2種類のみで、使用上限は各年度の実排出量(クレジット無効化量を控除する前)の10%です。使える種類が絞られたなかで対象企業の調達が進むため、J-クレジット全体の需要を押し上げる方向に働いています。価格の推移や今後の見通しの詳細はJ-クレジット価格の推移と2026年以降の見通しで解説しています。

出典:産業構造審議会 排出量取引制度小委員会 中間整理(案)|経済産業省

当社が毎日公表する参照価格の仕組み

当社では、東証カーボン・クレジット市場の基準値段に連動した参照価格を、毎営業日更新して公開しています。買取査定でも、この参照価格をベースラインに、クレジットの種類・量に応じた価格を提示する運用です。売り手側からすると、公開されている参照価格を見れば、査定提示額が市場の水準からどの程度の位置にあるかを自分でも確認できます。創出したクレジットの収益性そのものについては【知らないと損】J-クレジットは儲かる?プロが教える損益分岐点と失敗しない2つの方法も参考にしてください。

売却前に確認すべき注意点(創出者の加算ルール)

J-クレジット売却時の調整後排出量への加算ルールと森林・バイオ炭の例外

温対法の特定排出者は売却分が自社の調整後排出量に加算される

前述のとおり、自ら創出したJ-クレジットを他者へ移転(売却)した場合、その量は自社の調整後排出量に加算されます。たとえば、省エネ由来クレジットを年間300t-CO2創出し、特定排出者である自社の調整後排出量が9,500t-CO2だった年度に全量を売却すると、調整後排出量は9,800t-CO2まで増える計算になります。売却収入と調整後排出量の増加はトレードオフの関係にあるため、特定排出者に該当する創出企業は、売却するかどうかを年度単位で計画的に判断するのが賢明です。

出典:Q&A(調整後温室効果ガス関係)|温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(環境省)

森林由来・バイオ炭由来は加算対象から除外される

一方、森林の整備・保全による吸収由来と、バイオ炭の農地施用による貯留由来のクレジットは、加算の対象から除外されています。これらの種類を創出・売却する企業であれば、売却しても自社の調整後排出量には影響しません。自社が創出したクレジットの種類がどちらに該当するかは、売却前に必ず確認しておきたいポイントです。

移転手続きの実務:処理にかかる時間と確認事項

登録簿の移転操作に進む前に、契約書の数量、単価、移転先口座と、実際に入力する内容を照合してください。移転後の取消しはできないため、社内で確認したうえで実行します。相対取引では、移転と代金受領の順序、入金予定日を契約で定めてください。

契約書には、移転を実行する期限(例:契約締結から何営業日以内)と、移転確認後の支払い期限の両方を明記しておくことをおすすめします。「先に移転してしまい、資金の受け取りが遅れる」というトラブルを避けるには、移転の実行タイミングと支払いタイミングの前後関係を、口頭の約束ではなく契約書の条文として残しておくことが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q. J-クレジットはどこで売れますか?

大きく3つの窓口があります。制度事務局の「売り出しクレジット一覧」に掲載して購入希望者からの連絡を待つ相対取引、東証カーボン・クレジット市場に参加者登録して売り注文を出す方法、そしてJ-クレジット・プロバイダーなどの仲介・買取事業者に売却する方法です。量・スピード・かけられる手間のバランスで選ぶのが実務的な考え方です。

Q. 個人でもJ-クレジットを売却できますか?

J-クレジット登録簿システムの口座開設は法人・地方自治体等が対象で、個人名義での口座開設はできません。そのため、個人が東証カーボン・クレジット市場に直接参加したり、「売り出しクレジット一覧」に個人名義で掲載したりすることは想定されていません。個人がクレジットの創出に関わっている場合でも、実務上は法人(組合等)を通じて登録簿を管理するか、仲介・買取事業者に相談する形が現実的な窓口になります。

Q. 売却にかかる期間はどのくらいですか?

売却までの期間は経路ごとに異なります。売り出し一覧は買い手からの連絡、市場は注文の約定、仲介は相手方の合意、直接買取は査定と契約がそれぞれ成立条件です。提示価格や過去の所要日数から、今回の約定日や入金日を保証することはできません。

Q. 売却時に手数料はかかりますか?

東証カーボン・クレジット市場は、登録料・参加者保証金・基本料・売買手数料・決済手数料のすべてが本記事執筆時点で無料です。「売り出しクレジット一覧」への掲載も無料です。仲介・買取事業者を利用する場合は、成約時の手数料や査定価格への内包など、事業者によって条件が異なるため、事前に確認してください。

Q. 売却したクレジットは加算されると聞きましたが、必ず増えるのですか?

温対法の特定排出者に該当する企業が、自ら創出したクレジットを売却した場合に、その量が自社の調整後排出量に加算される仕組みです。特定排出者に該当しない企業には直接関係しません。また、該当する場合でも、森林由来・バイオ炭由来のクレジットは加算の対象から除外されているため、必ず増えるわけではありません。

まとめ

J-クレジットの売却には、相対取引(売り出しクレジット一覧)・東証カーボン・クレジット市場・仲介買取事業者という3つのルートがあり、価格の決め方とスピードのバランスが異なります。要点を整理します。

  • ルート①相対取引は掲載無料・価格は個別交渉、買い手探しに時間がかかる場合がある
  • ルート②東証カーボン・クレジット市場は参加者登録の要件と審査を確認し、登録後に指値注文で取引する
  • ルート③仲介・買取事業者は査定から契約・移転・入金まで一括で進み、査定条件を確認して直接売却を検討する場合に向く
  • 特定排出者が創出クレジットを売却すると調整後排出量に加算される(森林・バイオ炭由来は例外)
  • 登録簿の口座状況・認証番号を事前に確認しておくと、どのルートでも手続きがスムーズ

カーボンリンクは保有クレジットの情報を確認して買取可否と査定額を個別に提示します。カーボンリンク公式サイト公表の2026年8月時点の炭素クレジット累計取引額3.5億円超は、直接買取額だけではなく売買双方を含む自社公表値です。出典:カーボンリンク公式サイト

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この記事を書いた人

カーボンリンク編集部のアバター カーボンリンク編集部

カーボンリンク株式会社が運営するGX専門リサーチメディア「Carbonlink Research」の編集部。J-クレジット制度(経済産業省・環境省・農林水産省共同運営)・GX-ETS(排出量取引制度)・JCM(二国間クレジット制度)・国際カーボンクレジット市場を主要テーマとし、企業のGX担当者やクレジット保有者が意思決定に使えるリサーチ記事を執筆・監修している。カーボンリンク社はJ-クレジットの調達から、語れるオフセットストーリーの設計・発信支援までを一体で提供する「カーボンオフセットデスク」をはじめ、「J-クレジット買取センター」、仲介事業者向けプラットフォーム「OTC Hub」を運営しており、累計3.5億円を超える取引の最前線で得た実務知見を記事に反映している。

この記事の監修者

増山 大知の写真 増山 大知 カーボンリンク株式会社 代表取締役

カーボンリンク株式会社 代表取締役。J-クレジットの調達から、地域に語れるオフセットストーリーの設計・発信支援までを一体で提供する「カーボンオフセットデスク」をはじめ、「J-クレジット買取センター」、仲介事業者向けプラットフォーム「OTC Hub」を運営。東証プライム上場企業を含む10業界以上の法人との直接取引を行い、省エネ・農業・再生可能エネルギーのJ-クレジット買取成約実績を持つ。累計3.5億円を超えるカーボンクレジット取引の実務経験をもとに、Carbonlink Research の全記事を監修している。

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