カーボンクレジット・J-クレジットの実務で頻出する用語を、6つのカテゴリに分けて解説します。各用語の詳しい実務手順は、リンク先の解説記事をご覧ください。制度改定にあわせて随時更新しています。
基本概念
カーボンクレジット
温室効果ガスの排出削減量や吸収量を、第三者の認証を経て取引可能な形にしたものです。1クレジット=1t-CO2が基本単位で、国が運営する制度(J-クレジットなど)と民間主導の制度(VCM)があります。全体像はカーボンクレジットとは?仕組み・種類・活用事例で解説しています。
カーボンオフセット
自社の努力では削減しきれない温室効果ガス排出量を、カーボンクレジットの購入・無効化などで埋め合わせる考え方です。実践手順はカーボンオフセットのやり方|実践手順6ステップ、費用感はカーボンオフセットの費用をご覧ください。
カーボンニュートラル
温室効果ガスの排出量から吸収量・除去量を差し引いて、合計を実質ゼロにすることです。日本政府は2050年カーボンニュートラルを宣言しており、企業の削減目標や開示制度の前提となっています。
温室効果ガス(GHG)
大気中で熱を吸収し温暖化の原因となるガスの総称です。CO2(二酸化炭素)のほか、メタン・一酸化二窒素・フロン類などが含まれ、排出量はすべてCO2換算(t-CO2)に統一して算定します。
t-CO2(トンシーオーツー)
温室効果ガスの量を表す単位で、CO2換算1トン分を指します。カーボンクレジットは「1クレジット=1t-CO2」で発行・取引され、価格も「円/t-CO2」で表示されます。
キャップ&トレード
排出量の上限(キャップ)を参加者に設定し、過不足分を排出枠として売買(トレード)させる排出量取引の方式です。EU ETSが代表例で、日本ではGX-ETSが段階的にこの方式への移行を進めています。
ベースライン&クレジット
対策を実施しなかった場合の想定排出量(ベースライン)と、実施後の実排出量との差分をクレジットとして認証する方式です。J-クレジット制度はこの方式にもとづいています。
環境価値
温室効果ガスの削減・吸収や再生可能エネルギーの利用がもつ「環境への貢献」を、取引可能な価値として切り出したものの総称です。カーボンクレジットのほか、非化石証書・グリーン電力証書なども環境価値取引に含まれます。
J-クレジット制度
J-クレジット
省エネ設備の導入・再生可能エネルギーの活用・森林管理などによる温室効果ガスの削減量・吸収量を、国(経済産業省・環境省・農林水産省)が認証するクレジットです。制度の全体像はJ-クレジットとは?制度・種類・仕組みで解説しています。
J-クレジット制度事務局
J-クレジット制度の運営実務を担う窓口です。プロジェクト登録・クレジット認証の受付、登録簿の運用、入札販売の実施などを行っており、制度の一次情報は事務局の公式サイトで公開されています。
方法論
削減・吸収量の算定方法とモニタリング方法をあらかじめ定めた規程です。省エネ・再エネ・工業プロセス・農業・森林などの分野別に整備されており、プロジェクトは該当する方法論に沿って申請します。種類ごとの違いはJ-クレジット6種類と代表的な方法論をご覧ください。
プロジェクト登録
方法論に沿ってプロジェクト計画書を作成し、審査を経てJ-クレジット制度に登録する手続きです。登録後のモニタリング実績にもとづいてクレジットが認証されます。創出の流れはJ-クレジットの創出方法で解説しています。
モニタリング・認証
モニタリングは、登録したプロジェクトの削減・吸収実績を計画に沿って計測することです。モニタリング報告書は検証機関の検証を経て認証委員会に諮られ、認証されるとクレジットが発行されます。
追加性
その削減・吸収活動が「クレジット制度の後押しがなければ実施されなかった」と言えることです。クレジットの環境十全性を支える基本概念で、各方法論の適用条件に織り込まれています。
森林由来クレジット
間伐や植林などの森林経営活動による吸収量を認証したJ-クレジットです。発行量が少なく需要が強いため、他の種類より高値で取引される傾向があります。創出と評価の実務は森林・ブルーカーボン方法論の実装ガイドをご覧ください。
J-VER(オフセット・クレジット)
環境省が2008年度に開始したオフセット・クレジット(J-VER)制度によるクレジットです。2013年度にJ-クレジット制度へ統合されました。統合前に発行されたJ-VERはGX-ETSでは適格外ですが、温対法(SHK制度)の調整後排出量の報告では現在も利用が認められています。
国内クレジット
経済産業省が中心となって2008年度に開始した国内クレジット制度によるクレジットです。中小企業等の削減事業を対象とし、J-VERと同じく2013年度にJ-クレジット制度へ統合されました。
Jブルークレジット
藻場・干潟などの海洋生態系(ブルーカーボン)による吸収量を、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が認証するクレジットです。国のJ-クレジット制度とは別の民間制度である点に注意が必要です。
プログラム型プロジェクト
同種の小規模な削減活動を1つのプロジェクトに束ね、参加者を後から追加できる登録方式です。家庭の太陽光発電や中小企業の省エネ設備など、単独では登録コストが見合わない活動のクレジット化に使われます。
取引・活用
無効化
保有するクレジットを特定の用途に充当し、二度と流通できない状態にする手続きです。カーボンオフセットや温対法報告でクレジットの価値を主張するには無効化が必須です。手続きの実務はJ-クレジットの無効化とは?手続き・期限・方式で解説しています。
無効化通知書
無効化の完了時に制度管理者が発行する公式書類です。認証番号・シリアル番号・数量・用途・クレジット利用法人名などが記載され、オフセットの主張や報告の根拠資料の一つになります。詳細はJ-クレジット無効化通知書とは?をご覧ください。
登録簿・口座
J-クレジットの保有・移転・無効化を記録する国の管理システムが登録簿です。クレジットを自社名義で保有するには登録簿への口座開設が必要で、口座を持たずにプロバイダー等へ手続きを委ねる方法もあります。
移転
登録簿上の口座から別の口座へクレジットを移す手続きです。売買が成立すると、売り手口座から買い手口座(または無効化先)への移転が行われます。
プロバイダー
J-クレジットの販売・仲介や、創出支援・無効化代行などを行う民間事業者です。選び方と主要事業者はJ-クレジット・プロバイダーとは?選び方と一覧で解説しています。
仲介・買取
仲介は売り手と買い手の間に立って取引を成立させること、買取は事業者が売り手からクレジットを直接買い取ることです。当社(カーボンリンク株式会社)はJ-クレジットの仲介・買取を本業としています。
相対取引
取引所を介さず、売り手と買い手が直接(または仲介会社を通じて)数量・価格などの条件を合意して行う取引です。J-クレジットの取引の多くは相対で行われています。
JPXカーボン・クレジット市場
東京証券取引所が2023年10月に開設したJ-クレジットの取引市場です。約定価格が日々公表されるため、相対取引でも価格の目安として参照されます。価格動向はJ-クレジット価格の推移と2026年以降の見通しで解説しています。
入札販売
J-クレジット制度事務局が実施する入札方式のクレジット売出しです。落札結果(平均価格など)が公表され、市場価格の指標の一つになっています。
ダブルカウント
同一の削減・吸収価値を複数の主体が重複して計上することです。クレジット制度では無効化・登録簿・相当調整などの仕組みでダブルカウントを防止しています。
報告・開示制度
温対法(地球温暖化対策推進法)
日本の温暖化対策の基本となる法律です。一定規模以上の事業者に温室効果ガス排出量の算定・報告を義務付けており、J-クレジットの無効化分を報告に反映できます。実務は温対法報告でJ-クレジットを使う方法で解説しています。
SHK制度(算定・報告・公表制度)
温対法にもとづき、特定排出者が温室効果ガス排出量を算定・報告し、国が公表する制度です。報告では基礎排出量と調整後排出量の2本立てで排出量を示します。
調整後排出量
SHK制度の報告で、基礎排出量からJ-クレジット等の無効化量などを控除(調整)した排出量です。クレジット活用の効果が公表値に反映される仕組みで、計算式と実務は調整後排出量とは?で解説しています。
GX-ETS
GXリーグで2023年度に試行が始まった日本の排出量取引制度です。2026年度からの第2フェーズでは、CO2直接排出量が一定規模以上の企業に参加が義務化されます。適格クレジット(J-クレジット・JCM)には利用上限があります。詳細はGX-ETSフェーズ移行とはをご覧ください。
GXリーグ
経済産業省の主導で2023年度に本格稼働した、カーボンニュートラルへの移行に取り組む企業群の枠組みです。GX-ETSの試行はこの枠組みの中で行われてきました。
排出枠
排出量取引制度で参加者に割り当てられる、排出の許容量です。実排出量が排出枠を超える場合は、他社の余剰枠や適格クレジットの調達が必要になります。
Scope 1・2・3
GHGプロトコルによる排出量の区分です。Scope 1は自社の直接排出、Scope 2は購入した電気・熱に由来する間接排出、Scope 3はサプライチェーン全体のその他の間接排出を指します。算定実務はScope 3算定実務完全ガイド、削減しきれない分の対処はScope1削減できない分のオフセット活用をご覧ください。
TCFD/ISSB(IFRS S2)
気候関連のリスク・機会を財務情報として開示する国際的な枠組みです。TCFD提言の内容はISSBのIFRS S2基準に引き継がれ、日本ではSSBJ基準として制度化が進んでいます。開示実務はTCFD/ISSB開示の実務で解説しています。
CDP
企業の気候変動・水・森林への対応を質問書形式で調査し、スコアとして公表する国際的な環境情報開示プラットフォームです。機関投資家や取引先がサプライヤー評価に利用しています。
SBT(Science Based Targets)
パリ協定の水準と整合する科学的根拠にもとづいた温室効果ガス削減目標の認定枠組みです。SBT認定では自社の排出削減が基本とされ、カーボンクレジットによる相殺は削減目標の達成手段として認められない点に注意が必要です。
国際制度・市場
パリ協定6条
国境を越えたクレジット移転のルールを定めるパリ協定の条項(市場メカニズム)です。二国間などの協力的アプローチ(6条2項)と国連管理型メカニズム(6条4項)があり、JCMは6条2項に位置付けられます。詳細はパリ協定6条と相当調整で解説しています。
相当調整
クレジットを国際移転する際、移転元と移転先の国の間で削減量の二重計上を防ぐために行うNDC(国別削減目標)上の調整です。国際的に通用するクレジットかどうかを分ける重要な要件です。
JCM(二国間クレジット制度)
日本がパートナー国と二国間で協力し、途上国での削減・吸収プロジェクトから生じたクレジットを両国で分け合う制度です。制度の全体像はJCM(二国間クレジット制度)とは、J-クレジットとの使い分けはJCMとJ-クレジットの違いをご覧ください。
VCM(ボランタリーカーボン市場)
法規制によらず、企業の自主的な脱炭素目標のために取引される民間主導のカーボンクレジット市場です。Verra(VCS)やGold Standardなどのレジストリが代表的で、詳細はVCM完全ガイドで解説しています。
CORSIA
国際民間航空機関(ICAO)が運用する、国際航空分野のカーボンオフセット・削減制度です。航空会社に排出増加分のオフセットを求めるもので、適格クレジットの基準が厳格なことで知られます。
CBAM(EU炭素国境調整メカニズム)
炭素規制の緩い国からEUへの輸入品に、EU域内と同等の炭素コストを課す仕組みです。鉄鋼・アルミ・セメントなどが対象で、日本企業への影響と対応はCBAM日本企業対応ガイドで解説しています。
コンプライアンス市場/ボランタリー市場
コンプライアンス市場は排出量取引制度など法規制への対応のためにクレジット・排出枠が取引される市場、ボランタリー市場は企業の自主的な目標のために取引される市場です。同じクレジットでも、どちらの用途に使えるか(適格性)が価値を左右します。
技術・除去
炭素除去(CDR)
大気中のCO2を回収し、長期間貯留する技術・手法の総称です。植林などの自然由来から、DACなどの工学的手法まで幅があり、除去由来クレジットは品質面で高く評価される傾向があります。
DAC(直接空気回収)
大気中からCO2を直接回収する技術です。貯留と組み合わせたDACCSは恒久性の高い炭素除去として注目されています。コストと投資判断はDAC・CCUS投資判断ガイドで解説しています。
CCUS
排出源や大気からCO2を回収(Capture)し、利用(Utilization)または貯留(Storage)する技術の総称です。工場・発電所の排ガス回収から地中貯留まで、脱炭素の主要技術群の一つです。
ブルーカーボン
藻場・干潟・マングローブなどの海洋生態系が吸収・貯留する炭素のことです。日本ではJブルークレジットとしてクレジット化されており、実装の詳細は森林・ブルーカーボン方法論の実装ガイドをご覧ください。
バイオ炭
木材や籾殻などのバイオマスを炭化させたもので、農地に施用することで炭素を土壌に長期間固定できるとされています。J-クレジット制度に方法論があり、農業分野のクレジット創出手段として注目されています。
内部炭素価格(ICP)
企業が社内の投資判断や事業評価のために独自に設定する炭素の価格です。将来の炭素コストを先取りして意思決定に組み込む手法で、設計の実務は内部炭素価格(ICP)設計の実務で解説しています。
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