気候関連の開示では、TCFDの4本柱、IFRS S2、国内のSSBJ基準、有価証券報告書の記載要件を区別する必要があります。金融庁の2023年1月31日の改正は2023年3月期以降に終了する事業年度からサステナビリティ情報の記載欄を設け、2026年2月20日の改正は東証プライム市場の一定規模以上の会社にSSBJ基準を段階適用します。
自社がどの年度からSSBJ基準の対象になるかを先に確認し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の各情報を揃えます。以下の文例と数値は実在企業の開示や監査済み事例ではなく、作業の順序を示す架空の例です。

- TCFDとISSB(IFRS S2)の全体像|何が義務で何が任意か
- ガバナンス開示の実務|取締役会の関与を形式でなく実質で示す
- 戦略開示の実務|シナリオ分析の実装と定量化
- リスク管理開示の実務|プロセスの実質と全社統合
- 指標と目標の開示|Scope 1/2/3の有価証券報告書記載
TCFDとISSB(IFRS S2)の全体像|何が義務で何が任意か
まず制度の全体像を整理します。開示実務では、TCFD、ISSB、IFRS S2、GSSBなどの略称が並び、混乱しがちです。
TCFD|開示フレームワークの出発点
TCFDは、気候関連のリスクと機会をガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4本柱で整理する提言です。提言自体が一律に日本企業へ法定開示を課すわけではありません。自社の義務は、有価証券報告書の規定と対象となる開示基準を別に確認します。
ISSB(IFRS S2)と国内SSBJ基準の関係
ISSBが2023年に公表したIFRS S2は、気候関連のリスクと機会に関する開示要求を示します。IFRS S2が公表されたことだけで、日本の全企業に法的義務が生じるわけではありません。
日本では、金融庁が2026年2月20日の改正で東証プライム市場を指定し、SSBJが同日までに公表した基準を指定しました。対象企業と開始年度は国内の開示府令で判定します。
出典:IFRS S2 Climate-related Disclosures|IFRS Foundation
日本の義務化スケジュール
2026年10月1日時点で公布済みの規定を、3月決算企業の年度に読み替えた表です。平均時価総額は対象年度の前年度末とその前4年度末の5時点を用います。上場後5事業年度に満たない会社には別の計算があります。
| 対象 | 適用開始 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 有価証券報告書を提出する会社 | 2023年3月期以降に終了する事業年度 | サステナビリティ情報記載欄。全社にSSBJ基準の適用を求める規定ではない |
| 東証プライム市場、平均時価総額3兆円以上 | 2027年3月期に終了する事業年度から | SSBJ基準の段階適用 |
| 東証プライム市場、平均時価総額1兆円以上 | 2028年3月期に終了する事業年度から | SSBJ基準の段階適用 |
| 平均時価総額1兆円未満、スタンダード・グロース市場 | 上記2026年2月20日公布規定に開始年度の指定なし | 将来の制度改正を確認 |
2023年からの記載欄と、2027年・2028年からのSSBJ基準の段階適用は別の要件です。自社の決算期と平均時価総額に合わせて読み替えてください。
出典:2023年1月31日開示府令改正|金融庁、2026年2月20日開示府令改正|金融庁
TCFDとIFRS S2の4本柱対応関係
TCFDの4本柱とIFRS S2の要求事項の関係を整理します。
| TCFD4本柱 | IFRS S2の対応要求 | TCFDとの主な差分 |
|---|---|---|
| ガバナンス | 気候関連の監督体制、取締役会・経営陣の役割と責任分掌 | 監督と意思決定の過程を具体的に説明する |
| 戦略 | 移行リスク・物理リスク・機会、用いたシナリオ、財務的影響 | 気候レジリエンスを検討し、用いた前提と判断を説明する |
| リスク管理 | 気候リスクの特定・評価・管理プロセス、全社リスク管理との統合 | 識別・評価・管理の過程と全社リスク管理との関係を説明する |
| 指標と目標 | GHG排出量、気候関連のリスク・機会、目標と進捗など | 対象企業と基準に応じて要求指標と算定方法を確認する |
ガバナンス開示の実務|取締役会の関与を形式でなく実質で示す
TCFD/IFRS S2のガバナンス開示で最も多い失敗は「サステナビリティ委員会を設置し、取締役会に年1回報告しています」という1行記載です。どの判断を誰が行ったかが読み取れないため、実際の審議資料と決裁記録に沿って記述を具体化します。
取締役会への気候リスクの組み込み
IFRS S2が実質的に求めているのは、気候が経営の意思決定に組み込まれているという証拠です。開示の質を上げるためのチェックリストを示します。
- 取締役会が気候関連事項を審議した頻度(年何回か)
- 気候関連スキルを持つ取締役の人数と具体的な専門性
- 気候関連目標の達成状況が経営陣の報酬(KPI)に連動しているか
- 気候リスクが重要プロジェクトの承認フローに明示的に含まれているか
経営陣の役割分掌
経営陣レベルでは、誰が気候リスクのオーナーかが問われます。CFOが気候財務を担当、CSOがESG戦略を担当、という分掌が明示されているかが焦点です。「サステナビリティ委員会」という組織名だけでなく、委員長・事務局・上程プロセス・決裁基準まで記載することで、実質的なガバナンスが開示されます。
よくある失敗例と改善例の対比
失敗例:「当社では取締役会においてサステナビリティに関する重要事項を審議しております。」
改善例:「取締役会は年4回(四半期ごと)、気候関連事項を定例議題として審議しています。2025年度は移行リスクの高い3事業部の削減計画の承認、および1.5℃シナリオ分析の結果確認を行いました。また、執行役員の年次評価指標にScope 1+2削減率(目標:前年比5%削減)を組み込んでいます。」
改善例では何を・いつ・どのレベルで決定したかが読み取れ、読み手が判断過程を追いやすくなります。
戦略開示の実務|シナリオ分析の実装と定量化
以下の炭素価格、排出量は計算手順を示す仮定です。実際の開示には、採用したシナリオの出典、前提年、対象事業、計算根拠を併記します。炭素価格を社内で使う手順は内部炭素価格の解説も参照できます。
戦略開示はTCFD/IFRS S2の中で最も実務負荷が高く、かつ最も開示格差が出る項目です。
シナリオ分析の基本設計
IFRS S2は、企業の状況に応じた気候関連シナリオ分析を通じて戦略のレジリエンスを評価することを求めます。「1.5℃、2℃、4℃の3種類が全社一律に必須」という規定ではありません。選んだシナリオが自社の移行リスクと物理リスクを評価するのに適しているか、参照した公表資料と前提年を示します。
例えば移行政策が強まる場合と、物理リスクが大きい場合を比較し、対象事業、炭素価格や災害条件、設備対応の時期を変えて影響を試算します。数値を置く場合は公表シナリオと自社の前提を区別します。
移行リスクの定量化
炭素価格の影響を試算する場合、対象制度の排出量、無償配分、価格シナリオ、削減投資を分けます。単純な計算例として、対象排出量5万t-CO2に仮の価格1万円/t-CO2を掛けると5億円です。ただし制度上の費用は、排出枠配分や控除の条件を反映しなければ求められません。この5億円は実際のGX-ETS負担額や将来価格の予測ではありません。
物理リスクの定量化
洪水や熱波は拠点別に評価します。所在地のハザード情報、設備の停止条件、停止日数と売上・固定費の関係を記録し、参照する気候シナリオと対象年を示します。確率や損失額を出典なしに置くと、実際のリスク評価と混同されます。
慢性的なリスクでは、取水量や気温の変化が操業費用へどう伝わるかを確認します。被害額が不明なら、前提と未算定の項目を明示します。
機会の開示
機会は見落とされがちです。IFRS S2は移行・物理それぞれのリスクと並んで「機会」の開示を求めています。
- 省エネ・電化投資による固定費削減効果(定量)
- 低炭素製品・サービスへの需要移行による売上増加余地
- 再エネ調達コスト低下による電力コスト改善
- ESG評価向上による調達コスト低下(グリーンローン金利優遇)
- J-クレジット創出によるキャッシュフロー(自社削減をクレジット化して売却)
リスク管理開示の実務|プロセスの実質と全社統合
リスク管理の開示で「気候リスクを識別・評価・管理するプロセスがあります」と書くだけでは不十分です。IFRS S2はプロセスの詳細と全社リスク管理フレームワークへの統合を求めています。
気候リスク特定プロセスの開示
以下の要素を具体的に記述することで、実質的なリスク管理が伝わります。
- リスクの特定手法: 業界固有のシナリオ分析、バリューチェーンマッピング、ステークホルダーインタビュー
- 評価基準: 財務影響の重大性(金額閾値)と発生可能性の2軸マトリクス
- 評価頻度: 年次評価と重大変化時の臨時レビュー
- 責任部署: 具体的な部署名と担当役員
- 全社リスク管理との統合: ERMフレームワークの気候リスク追加のプロセス、取締役会への報告系統
重要性の評価基準
IFRS S2では「重要性(Materiality)」の判断プロセスも開示対象です。「なぜこのリスクが重要で、このリスクは重要でないと判断したか」の根拠を示すことが求められます。金額閾値を明示するか、少なくとも「財務影響の規模・蓋然性・対応可能性」という3軸の判断枠組みを示すことが実務上の最低限です。

指標と目標の開示|Scope 1/2/3の有価証券報告書記載
指標と目標は、開示の「実力差」が最も数値として表れる領域です。
指標と目標の開示対象を確認する
IFRS S2はGHG排出量、移行・物理リスク、気候関連の機会、資本配分、内部炭素価格、報酬との連動などの共通指標を扱います。各項目の開示方法と経過措置は、適用される基準と対象年度に応じて確認します。IFRS S2の項目を列挙することと、全企業に同じ日本法上の義務があると述べることは別です。
Scope 3の扱い|どこまで開示すべきか
Scope 3については、算定境界、重要なカテゴリ、データの出所、推計方法と不確実性を整理します。「全体の10%以上なら必須」という一律の国内法上の線引きはありません。金融庁の2026年改正は、対象企業のScope 3定量情報について推論過程と社内開示手続の記載を求め、合理的な記載に関するセーフハーバーの考え方も示しています。
Scope 3の各カテゴリの算定方法は、Scope 3の15カテゴリと算定方法で確認できます。開示対象の判定と算定精度の向上は分けて考え、適用基準と対象年度を先に確かめてください。
SBT(Science Based Targets)との一体運用
SBTiの目標認定は、国内のSSBJ基準の適用判定とは別の仕組みです。自社に認定目標がある場合は、基準年、対象スコープ、目標年、進捗を開示数値と照合します。認定がない企業にSBTiへの申請を法的義務として示すことはできません。
GX-ETS参加状況の開示
東証プライム上場企業のうちGX-ETSに参加している場合、制度対象、財務上の影響、社内目標との関係を評価して開示要否を判断する項目になります。具体的には以下の項目です。
- GX-ETSへの参加有無・参画年度
- 設定した削減目標(プレッジ内容)
- 当該年度の目標値と実績値
- 超過削減枠の保有・売却状況、または不足枠の補填に使用したクレジット種別・量
- 第2フェーズ以降の排出枠ポジション見通し(定性)
J-クレジット保有・使用状況の開示規律
カーボンクレジットの保有・使用状況は、気候開示の中でも特にグレーゾーンが多い領域です。適切な開示で投資家の信頼を獲得し、不適切な開示(グリーンウォッシュ)のリスクを排除することが重要です。
開示すべき項目
J-クレジットをはじめとするカーボンクレジットの開示において、用途と主張を誤認させないため、次の情報を社内で整理しておくと説明しやすくなります。これらは、全企業に一律で課される開示項目ではありません。
- 保有クレジットの量・種別・ヴィンテージ: 期末時点の保有残高
- 使用したクレジットの量・種別: Scope 1/2目標達成のためにオフセットとして使用した量
- 使用クレジットがネットゼロ計算に含まれているか否かの明示: 「クレジットを除いた実排出量」と「クレジット使用後のネット排出量」を分けて示す
- クレジットの品質情報: 方法論・プロジェクト所在地・第三者検証機関
グリーンウォッシュを避けるための原則
企業がクレジット開示でグリーンウォッシュと認定されるリスクのある典型的なパターンは次のとおりです。
- 排出削減目標の達成状況を示す数値にクレジットを含めながら、その旨を明記しない
- 「カーボンニュートラル達成」と宣言しながら、オフセットに使用したクレジットの品質・追加性を開示しない
- Scope 3を除いた範囲でのみカーボンニュートラルを主張し、「全排出量ベース」での達成のように誤認させる
GHGプロトコルの「Land Sector and Removals Guidance」やSBTiのガイドラインでは、バリューチェーン排出量の削減(Scope 1/2/3の実排出量削減)と、残余排出量のオフセットは分けて報告することが明確に求められています。
J-クレジット買取・創出の開示機会
逆に、自社でJ-クレジットを創出して売却する立場の企業にとっては、その実績を開示することが気候関連機会の具体的な事例として機能します。
- 自社生産拠点での省エネ投資によるScope 1削減量のクレジット化実績
- 売却したクレジットの量・価格帯・用途
- 創出クレジット収入のGX投資への還流
TNFD(自然関連)との接点を確認する
気候開示が定着しつつある中、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)との接点もあります。TNFDは自然関連の任意の開示枠組みであり、ここで日本の一律の義務化日程を示すものではありません。2023年9月に最終提言を公表したTNFDは、TCFDと同じ4本柱(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標・目標)を採用しつつ、対象を生態系・生物多様性・水・土地利用にまで拡張しています。
TCFDとTNFDの接続点
TCFDとTNFDは独立した制度ではなく、実務上は以下の点で連動します。
- 物理リスクの重複: 気候変動による自然生態系の変化(洪水・干ばつ・土地劣化)はTCFDの物理リスクとTNFDのリスク双方に関連
- バリューチェーン開示: サプライチェーン上の自然依存・影響の開示が、Scope 3開示の深化と一体化
- 指標の共通化: ウォーターフットプリントや土地利用面積はTCFD/TNFD共通で重要
農業・食品・素材・製薬・観光業など自然資本への依存度が高い業種は、TNFDの情報収集も選択肢になります。TCFDのシナリオ分析インフラを構築しておくことがTNFD対応の土台になるため、今のうちに「TCFDとTNFDを統合できる開示インフラ」を設計することが賢明です。

サステナビリティ報告書 vs 統合報告書 vs 有価証券報告書|使い分けの実務
開示媒体が複数あるため、各情報をどの媒体に記載するか迷う企業も多いです。
各媒体の位置づけ
| 媒体 | 法的位置づけ | 主な読者 | 適した開示内容 |
|---|---|---|---|
| 有価証券報告書(サステナビリティ欄) | 金融商品取引法上の法定開示 | 機関投資家、監査法人 | IFRS S2準拠の4本柱、Scope 1/2/3数値、目標と実績 |
| 統合報告書 | 任意 | 機関投資家、アナリスト | 財務×非財務の統合、価値創造ストーリー |
| サステナビリティ報告書 | 任意(GRI等準拠が多い) | NGO、社会全般、サプライチェーン | 定性情報・ステークホルダー対話・コミュニティ影響 |
| プレスリリース・ウェブ | 任意 | 広範なステークホルダー | 最新の進捗・施策のハイライト |
有価証券報告書との整合性の担保
統合報告書やサステナビリティ報告書に記載したデータが有価証券報告書と矛盾する場合、法的リスクが生じます。実務上は以下の管理が必要です。
- 「シングルソース・オブ・トゥルース」の確立: GHG排出量や削減目標の数値は1つのマスターデータから全媒体に展開
- 開示タイムラインの統合: 有価証券報告書の提出スケジュールに合わせてサステナビリティ報告書の確定スケジュールを設定
- 第三者保証の範囲: 有価証券報告書記載の数値に監査法人の限定的保証(Limited Assurance)を取得している場合、同一数値を他媒体に転用するとその保証が適用されるか確認
日本企業の典型的失敗と模範開示の対比
失敗1|コピペ的な抽象記述
失敗例(戦略・リスク管理):「当社は気候変動が事業に与えるリスクを認識し、適切に管理してまいります。」
模範例:「1.5℃シナリオにおいて2030年の内部炭素価格を1万円/t-CO2として試算した場合、現状の排出水準では年間約3億円のコストインパクトが生じます。対応策として、2026〜2028年度に製造工程の電化改修(投資額15億円)を実施し、Scope 1を2023年度比40%削減することでリスク額を約1.8億円まで圧縮します。」
失敗2|数値なき目標宣言
失敗例(指標と目標):「2050年カーボンニュートラルを目指します。」
模範例:「2030年度目標: Scope 1+2を2019年度比50%削減(SBTi認定取得済み)。2025年度実績は同比28%削減。年平均削減率4.4%で推移しており、目標削減幅に対する進捗率は56%。残余の削減は設備更新計画(2027〜2029年度、投資額28億円)で対応する予定。なお、Scope 3(カテゴリ1・11)は2030年目標を2019年度比30%削減と設定し、上位10サプライヤーへのScope 3データ提供依頼を2025年度から開始しています。」
失敗3|Scope 3を「算定が困難」で切り捨て
失敗例:「Scope 3については算定が困難なカテゴリが多く、現在対応を検討しています。」
模範例:「Scope 3の全15カテゴリの概算を実施した結果、当社の総排出量の78%がScope 3に起因し、うちカテゴリ11(使用段階の製品)が全体の62%を占めることを確認しました。カテゴリ11については製品別のLife Cycle Assessment(LCA)を2023年度に完了しており、製品ポートフォリオの低炭素化(省エネ性能30%向上)を2030年目標としています。カテゴリ1については上位50サプライヤーへの一次データ提供依頼を2025年度に開始し、2027年度までに全体の80%を一次データに切り替える計画です。」
失敗4|シナリオ分析が定性のみで定量化なし
失敗例(戦略):「1.5℃シナリオでは炭素規制が強化され、当社の製造コストが増加するリスクがあります。」
模範例:「1.5℃シナリオ(IEA NZEベース)では2030年の炭素価格を1万円/t-CO2と想定。当社のScope 1直接排出45,000t-CO2に対し、4.5億円/年の炭素コストが発生します。自社削減(2030年比40%削減、設備投資18億円)実施後の残余排出量27,000t-CO2に対するリスク額は2.7億円に圧縮されます。J-クレジット等外部クレジットでの補填を前提とした場合、クレジット価格5,000〜15,000円/t-CO2の幅で年間1.35億〜4.05億円のコストレンジとなります。」
よくある質問(FAQ)
Q1. 有価証券報告書のサステナビリティ欄はどの程度の分量が必要ですか?
一律のページ数では判断できません。適用される開示府令とSSBJ基準を確認し、要求事項ごとに自社の判断、数値、算定根拠を追える構成にします。他媒体との参照関係は提出時の規則に沿って確認してください。
Q2. シナリオ分析で使用するシナリオを自社で独自に作成する必要がありますか?
必ず独自シナリオを作る必要はありません。公表シナリオを参照する場合も、対象事業、地域、時間軸とリスクに合うかを確認し、追加した前提を明示します。採用したシナリオと自社の判断過程を追えることが重要です。
Q3. Scope 3の算定は外部コンサルに委託しないと難しいですか?
カテゴリ1(購入した製品・サービス)やカテゴリ11(使用段階の製品)はLCAデータが必要なため、初回の算定は外部専門家の支援が現実的です。一方、カテゴリ6(出張)やカテゴリ7(従業員の通勤)は自社データ(交通費精算データ・人事データ)から算定できるため内製化しやすい項目です。まず算定可能なカテゴリから着手し、年次で範囲を広げていく段階的アプローチが推奨されます。
Q4. J-クレジットを使ってScope 2をゼロと開示することは可能ですか?
J-クレジット(排出削減系)のオフセット使用によるScope 2ゼロの主張は、GHGプロトコルのScope 2ガイダンスの厳密な解釈では認められません。Scope 2をゼロ(またはゼロに近い水準)にするためには、非化石証書(グリーン電力証書・FIT非化石証書等)または再生可能エネルギーの直接調達(PPA・自家発電)が必要です。J-クレジットは「残余排出量のオフセット」として目標達成に活用するものとして位置づけ、Scope 2の数値自体には反映しないのが現在の主流解釈です。
Q5. GX-ETS参加企業はIFRS S2上どの指標に参加状況を記載すればよいですか?
GX-ETSへの参加だけで独立した一律の開示欄が決まるわけではありません。財務的に重要な影響がある場合は、排出量、移行リスク、目標と進捗、クレジット利用の説明と整合させます。
まとめ|対象年度を確認して開示準備を進める
まず有価証券報告書の記載欄とSSBJ基準の対象年度を確認します。そのうえで、次の5領域から自社に必要なデータと統制を揃えます。
- 算定インフラ: Scope 1/2の月次算定体制、Scope 3の主要カテゴリ一次データ収集体制の構築
- シナリオ分析: 採用したシナリオの出典・前提年・対象事業を示し、移行リスクと物理リスクの評価方法を説明する
- 目標管理: SBTi認定取得または整合目標の設定、GX-ETS参加状況の記録・報告体制
- ガバナンス: 取締役会・経営陣の関与の実質化(議事録・KPI連動の証拠)と文書化
- クレジット開示規律: J-クレジットの保有・使用状況の開示ルール策定、グリーンウォッシュリスクの法務確認
不足している情報があれば、その理由、推計で補った範囲、改善予定を社内記録と一致させます。経過措置や二段階開示を使えるかは、対象年度と金融庁の公布資料で確認してください。
開示の品質は「書けているか」ではなく「実態があるか」で決まります。数値を書いた瞬間に、その算定根拠・検証体制・目標設定プロセスの実態が問われます。開示作業を機会として、気候関連の管理体制そのものを高度化していく姿勢が、長期的なステークホルダー信頼の源泉です。
J-クレジット保有・調達・オフセット戦略のご相談はカーボンリンクへ
TCFD/ISSB対応を進める中で、避けて通れないのがJ-クレジットの開示規律とカーボンオフセット戦略です。「どのクレジットを保有・使用すれば投資家に納得される開示ができるか」「Scope 1/2の削減ギャップをオフセットで補填する際の品質条件は何か」「GX-ETSの遵守補填に使えるクレジットを調達したい」といった論点は、開示チームと調達チームで前提を揃えて検討します。
カーボンリンク株式会社(J-クレジット買取センター)は、J-クレジットの買取・調達・オフセット設計をワンストップで支援しています。
- 品質確認済みのJ-クレジット調達: 方法論・ヴィンテージ・第三者検証済みの案件を複数ご提案。候補ごとの方法論と利用条件を確認します。
- オフセット設計の実務支援: 「削減で埋める分」と「クレジットで補填する分」の最適配分を、自社のScope 1/2/3データと削減ロードマップをもとに試算します。
- 創出企業からの直接買取: 省エネ投資・再エネ導入でJ-クレジットを創出された企業の売却窓口としても機能。条件を確認したうえで買取相談を受け付けます。
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