J-クレジットの購入先は、プロバイダー、売り手との相対取引、東証市場、マーケットプレイスの4つが主な選択肢です。同じ種類のクレジットでも、購入量、支援範囲、無効化の費用によって総額と手間が変わります。
まず購入方法と事業者・サービスを比較し、自社の用途に合う窓口を絞り込みます。購入企業の事例は、購入先を選んだ後に活用方法を検討する参考として掲載しています。
- 購入先を選ぶための費用・数量・用途・手続き支援の確認点
- J-クレジットを購入できる4つの方法と特徴の比較
- J-クレジット・プロバイダーとマーケットプレイスの一覧
- J-クレジットの価格相場と調達タイミングの考え方【2026年最新】
- 購入から無効化・報告までの手続きの流れ
見積りを依頼するときは、用途、数量の目安、希望時期を揃えると購入先を比較しやすくなります。数量や種類が未定なら、一般相談フォームで用途と社内の検討期限からご相談いただけます。
J-クレジットの購入方法4つを比較
J-クレジットを購入する方法は主に4つあります。それぞれの特徴を理解し、自社の調達量や目的に合った方法を選択することが重要です。

| 購入方法 | 向いている相談 | 契約前の確認点 |
|---|---|---|
| プロバイダー仲介 | 候補選びと手続き支援を相談したい | 対象用途、手数料、代行範囲 |
| 相対取引 | 創出者を指定し条件を交渉したい | 最低数量、価格、引渡し・無効化の分担 |
| 東証市場 | 公開される市場情報を見て売買したい | 参加要件、取引単位、売買注文の状況 |
| マーケットプレイス | 複数の掲載案件を比べたい | 在庫、最低数量、総額、証憑の内容 |
J-クレジット・プロバイダーによる仲介
J-クレジット・プロバイダーは、J-クレジット制度事務局に登録された仲介事業者です。売り手の発掘・条件交渉・契約手続き・クレジット移転まで一括して代行します。
プロバイダー利用のメリットは以下のとおりです。
- J-クレジット取引の専門知識がなくても購入できる
- 購入目的に合ったクレジットの種類を提案してもらえる
- 契約書作成・口座開設などの手続きを代行してもらえる
- 少量(10t-CO2程度)から対応可能なプロバイダーが多い
一方、プロバイダーに支払う手数料(仲介手数料)が発生するため、大量調達の場合は他の方法との比較検討が必要です。

売り出しクレジット一覧からの相対取引
J-クレジット制度事務局のウェブサイトには「売り出しクレジット一覧」が公開されており、売り手と直接交渉して購入できます。
相対取引の流れは以下のとおりです。
- J-クレジット制度事務局の「売り出しクレジット一覧」を確認する
- 希望するクレジットの売り手に連絡を取る
- 価格・数量・支払条件を交渉する
- 売買契約を締結する
- J-クレジット登録簿システムでクレジット移転手続きを行う
相対取引は仲介手数料がかからないため、コストを抑えられるメリットがあります。ただし、売り手との交渉・契約・移転手続きを自社で行う必要があり、ある程度の知識と工数が求められます。
東証カーボン・クレジット市場での取引
2023年10月に開設された東証カーボン・クレジット市場では、J-クレジットを取引所経由で売買できます。市場の価格情報が公表されますが、流動性は銘柄や日によって異なります。
東証市場を利用するメリットは以下のとおりです。
- 市場価格での取引のため、価格交渉の手間が省ける
- 継続的な調達が必要な場合に便利
- 大量調達に対応しやすい
- 取引価格が公開されるため、相場の参考になる
利用には東証市場の参加要件と取引ルールを確認します。売買の成立は注文状況によるため、必要量を希望日に確保できるとは限りません。価格を比較する際は、東証基準値段の日次推移と個別見積りを分けて確認してください。
マーケットプレイスの活用
J-クレジットのマーケットプレイスは、オンライン上で複数の売り手から選んでクレジットを購入できるサービスです。近年、民間事業者によるマーケットプレイスが増えており、選択肢が広がっています。
マーケットプレイス利用のメリットは以下のとおりです。
- 複数のクレジットを比較検討できる
- 少量(1t-CO2〜)から購入可能なサービスが多い
- オンラインで手続きが完結するため、購入までのスピードが早い
- クレジットの創出地域・プロジェクト内容を確認して選べる
カーボンリンクは、J-クレジットのマーケットプレイスに加え、2035年までを見据えた複数年の調達条件の整理・調整を支援しています。JCMは案件ごとに買い手と関係者の紹介・条件整理を行います。取扱可否・数量・価格・時期は個別確認となり、将来の供給や制度適格性を保証するものではありません。

J-クレジットを購入できる事業者・サービス一覧
J-クレジットの購入先は、公式登録されたプロバイダーと、民間のマーケットプレイスに大別されます。ここでは主な購入先を一覧で紹介します。
J-クレジット・プロバイダー一覧(公式登録事業者)
制度事務局が公表するJ-クレジット・プロバイダー参加者と、各社の買い手向け支援概要です。2026年9月8日に公式一覧を確認しています。登録は事業者の認定・認証や将来の信頼性を保証するものではありません。取扱可否、手数料、支援範囲は個別に確認してください。
| 公式一覧の参加者 | 買い手向け支援の概要 |
|---|---|
| 株式会社イトーキ | オフセットの企画・算定・PR、用途に合う銘柄の選定 |
| 株式会社ウェイストボックス | 排出量把握・開示とクレジット活用を含むカーボン管理 |
| 株式会社エスプールブルードットグリーン | 戦略立案から調達・無効化までの支援 |
| カーボンフリーコンサルティング株式会社 | 用途に応じたクレジット提供とオフセット支援 |
| クレアトゥラ株式会社 | 大口調達や再エネ・森林・農業等のクレジット相談 |
| 静銀経営コンサルティング株式会社 | 地域で創出されたクレジットの活用支援 |
| 住友商事株式会社 | カーボンクレジット・GX-ETS等の相談 |
| 株式会社バイウィル | 脱炭素戦略とクレジット・証書の調達支援 |
| Permanent Planet株式会社 | 小口・イベント等の需要と無効化手続きの支援 |
| 一般社団法人more trees | 「more treesの森」由来の森林クレジットの紹介 |
プロバイダーの最新一覧は、J-クレジット制度事務局のウェブサイトで確認できます。プロバイダーによって得意とするクレジットの種類や取引規模が異なるため、複数社に問い合わせて比較することをおすすめします。
出典:J-クレジット・プロバイダー一覧|J-クレジット制度事務局
J-クレジットマーケットプレイス一覧
民間事業者が運営するマーケットプレイスでは、オンラインでJ-クレジットを購入できます。以下は主なマーケットプレイスの一覧です。
| サービス名 | 運営会社 | 特徴 | 最小購入単位 |
|---|---|---|---|
| カーボンリンク マーケットプレイス | カーボンリンク株式会社 | J-クレジットの購入窓口。複数年調達の調整、JCMの紹介・条件整理は個別相談 | 案件・契約条件を確認 |
| sustineri(サスティナリ) | 株式会社sustineri | クレジット購入とオフセット証明書の発行をワンストップで提供 | 案件・契約条件を確認 |
| e-dash | 三井物産系列 | 排出量算定ツールとクレジット購入を連携 | 案件・契約条件を確認 |
| booost technologies | booost technologies株式会社 | SaaSプラットフォームとクレジット購入の連携 | 案件・契約条件を確認 |
マーケットプレイスを利用する際は、取り扱っているクレジットの種類・創出地域・購入手続きの流れ・手数料体系を事前に確認することが重要です。
購入先の選び方のポイント
J-クレジットの購入先を選ぶ際は、以下の5つのポイントを確認しましょう。
- 購入量への対応:少量(10t-CO2未満)から対応可能か、大量調達(1,000t-CO2以上)に対応できるか
- クレジットの種類:購入目的に合った種類(再エネ電力由来・森林吸収由来など)を取り扱っているか
- 手続き代行の範囲:契約書作成・口座開設・無効化手続きなどをどこまで代行してもらえるか
- 価格・手数料の透明性:仲介手数料や諸費用が明確に提示されているか
- 報告書類の対応:温対法報告・CDP報告・GX-ETS対応に必要な書類を提供してもらえるか
見積りは、クレジット単価だけで比べず、購入代金に手数料と税を加えた総額を確認します。代理無効化や通知書の交付を依頼する場合は、それらが見積りに含まれるかも揃えてください。
カーボンリンクへの相談では、候補ごとに種類、地域、数量、希望時期を確認し、取引できる条件をお返しします。地域などの希望条件で選ぶ案と、予算に収まる候補から選ぶ案を比較したい場合は、優先する条件と変更できる条件をお知らせください。
J-クレジットとは?購入を検討する企業が押さえるべき基本
J-クレジットは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの活用によるCO2削減量を国が認証する制度です。環境省・経済産業省・農林水産省が共同で運営しており、2013年度の制度開始以来、累計1,100万t-CO2以上のクレジットが認証されています。
購入したクレジットは無効化し、各制度の要件に沿って温対法報告や自主的なカーボンオフセットに活用します。SBTの短期・長期削減目標の達成実績に、カーボンクレジットを算入することはできません。目標に向けた自社・バリューチェーン内の削減と、バリューチェーン外の緩和への貢献(BVCM)は区別します。出典:SBTi公式FAQ。
J-クレジット制度の仕組みとカーボンオフセットの考え方
J-クレジット制度は「削減を実施した事業者」と「削減量を必要とする事業者」をつなぐ国内の炭素市場です。制度の流れは以下のとおりです。

- 省エネ設備導入や森林整備などのプロジェクトを実施する
- J-クレジット制度事務局に申請し、第三者機関の審査を受ける
- CO2削減量・吸収量がクレジットとして認証される
- 認証されたクレジットを売却し、購入企業がオフセットに活用する
カーボンオフセットとは、自社の排出量を削減する努力を行った上で、削減しきれない排出量をクレジットの購入で埋め合わせる考え方です。「まず削減、残りをオフセット」という順序が国際的にも求められています。

J-クレジットの種類(省エネ・再エネ電力・再エネ熱・森林・農業由来)
J-クレジットは主に5つの種類に分類されます。種類によって価格や用途が異なるため、購入目的に合わせた選択が重要です。
| 種類 | 主な創出方法 | 購入前の確認点 |
|---|---|---|
| 省エネ | 高効率ボイラー・空調設備 | 温対法等の用途、数量、認証時期 |
| 再エネ電力 | 太陽光・風力等 | RE100等の電源・地域・発電時期の要件 |
| 再エネ熱 | バイオマスボイラー等 | 電力由来との用途の違い |
| 森林 | 森林経営・植林 | 地域、プロジェクト内容、証憑 |
| 農業 | 水田メタン削減・バイオ炭等 | 方法論、数量、引渡し時期 |

再エネ電力由来のJ-クレジットは、RE100やCDP報告で「再生可能エネルギー由来の電力使用」として計上できるため、近年需要が高まっています。森林吸収由来は単価が高い一方、「地域の森林保全に貢献」というストーリー性があり、PR効果を重視する企業に人気があります。

J-クレジット購入が企業にもたらす5つのメリット
J-クレジットの購入は、排出量の相殺だけでなく、複数のビジネスメリットをもたらします。
- 温対法・省エネ法の報告への活用:温対法の算定・報告制度において、J-クレジットで調整後排出量を減らせる
- 用途に応じた開示・再エネ利用への活用:CDPでは報告項目に沿って開示し、RE100では電源・地域・発電時期等の要件を確認する。SBTの削減目標にクレジットは算入できない
- GX-ETSでの活用:J-クレジットとJCMクレジットを合計し、無効化前の実排出量の10%を上限として、制度の要件に沿って利用する
- 企業評価・ESG投資での評価向上:カーボンオフセットの取り組みは、ESG評価機関やサプライチェーンからの評価向上につながる
- 地域貢献・PR効果:特定地域のクレジット購入により、地域の環境保全活動を支援し、CSR・広報に活用できる
特にGX-ETSの本格稼働により、J-クレジットの需要は今後さらに高まると予測されています。早期の調達を検討する企業が増えている背景には、この制度変更があります。
J-クレジットを購入した企業の事例一覧【業種・目的別】
J-クレジットを実際に購入している企業は、製造業・金融・不動産・サービス業など多岐にわたります。ここでは公開されている事例を業種・目的別に整理して紹介します。
大企業の購入事例(ソニー・日本生命など)
日本を代表する大企業も、J-クレジットを積極的に活用しています。以下は公開されている主な事例です。
| 企業名 | 業種 | 購入クレジットの種類 | 活用目的 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| ソニーグループ | 電機 | 再エネ電力由来 | RE100目標達成、事業所の排出量オフセット | 参照元 |
| 日本生命保険 | 金融・保険 | 森林吸収由来 | カーボンニュートラル宣言の達成、地域貢献PR | 参照元 |
| 三井住友銀行 | 金融 | 再エネ電力由来 | オフィスの排出量オフセット、CDP報告 | 参照元 |
| 大和ハウス工業 | 不動産・建設 | 再エネ電力由来・森林吸収由来 | 建設現場の排出量オフセット | 参照元 |
| 日本郵船 | 海運 | 省エネ由来 | 物流サービスのカーボンオフセット提供 | 参照元 |
購入事例は、購入量や用途が自社にも当てはまるかを確認して参考にします。RE100の要件確認と、SBTの削減目標への算入可否は別の論点です。
中小企業の購入事例ケース
中小企業においても、取引先からの要請やCSR強化を目的としたJ-クレジット購入が広がっています。
| 業種 | 購入量の目安 | 活用目的 |
|---|---|---|
| 製造業(自動車部品) | 100〜500t-CO2/年 | 大手自動車メーカーからのサプライチェーン排出量削減要請への対応 |
| 食品製造業 | 50〜200t-CO2/年 | カーボンニュートラル商品の開発、環境ラベル取得 |
| 印刷業 | 20〜100t-CO2/年 | カーボンオフセット印刷サービスの提供 |
| 物流業 | 200〜1,000t-CO2/年 | グリーン物流サービスの差別化、荷主への報告 |
| IT・Web制作 | 10〜50t-CO2/年 | カーボンニュートラル宣言、採用ブランディング |
中小企業の特徴として、大企業ほどの購入量は必要ないものの、「取引先からの要請」や「カーボンニュートラル商品・サービスの開発」が購入のきっかけになるケースが多い点が挙げられます。
購入量が少ない場合でも対応可能なプロバイダーやマーケットプレイスを選ぶことが重要です。

地域貢献型クレジットの活用事例
特定地域の森林や農地由来のJ-クレジットを購入することで、地域貢献と排出量オフセットを両立する事例が増えています。
- 長野県有林J-クレジット:県有林から創出されたクレジットを購入する企業が増加。購入企業は長野県のウェブサイトで公表される
- 高知県四万十町の森林クレジット:四万十川流域の森林整備プロジェクト由来。地域の林業振興にも貢献
- 北海道下川町のクレジット:循環型森林経営のモデルケース。FSC認証林由来のクレジット
地域貢献型クレジットは単価が高い傾向にありますが、「創出地域との関係構築」「地域活性化への貢献」といったストーリー性があり、CSRレポートや広報活動に活用しやすいメリットがあります。自社の事業所所在地や取引先地域のクレジットを優先的に購入する企業も見られます。

GX-ETSへの活用とSBT目標との区別
2026年度に本格稼働するGX-ETS(排出量取引制度)への対応を見据えて、J-クレジットを事前調達する企業が増えています。
GX-ETS参加企業にとって、J-クレジットは排出枠の一部として使用可能です。2023年度から始まった第1フェーズ(自主参加期間)において、以下のような活用パターンが見られます。
- 製造業大手:年間数万t-CO2規模でJ-クレジットを調達し、GX-ETS排出枠として活用
- 電力・エネルギー:再エネ電力由来クレジットを中心に大量調達し、発電時の排出量をオフセット
- 金融機関:投融資先のScope3排出量オフセットを視野に入れた調達
SBTの短期・長期削減目標の達成実績に、カーボンクレジットを算入することはできません。クレジットによるBVCMへの貢献は、SBT目標の達成とは分けて検討・報告します。出典:SBTi公式FAQ。
J-クレジットの価格相場と今後の見通し【2026年最新】
J-クレジットの価格は需給や用途によって変動します。価格ハブで基準日と区分を確認し、購入判断には同じ条件の見積りを用います。
種類別の価格相場(再エネ電力・省エネ・森林)
価格は種類、数量、引渡し時期、取引条件で変わります。日次の市場情報と、実際に購入する案件の見積りを分けて確認してください。
| 価格の種類 | 確認先・比較条件 |
|---|---|
| 東証の基準値段 | 日次更新の9区分・価格推移で基準日を確認。個別の約定価格とは異なります |
| 個別の購入見積り | 用途・種類・数量・引渡し時期を揃え、手数料・無効化費用・税の扱いを比較 |
| 複数年の調達条件 | 年度別の数量・価格決定方法・供給できない場合の扱いを確認 |
東証カーボン・クレジット市場の取引価格は公開されており、市場価格の参考になります。ただし、市場外の相対取引やプロバイダー経由の取引では、上記と異なる価格になる場合があります。

価格上昇の背景とGX-ETSの影響
J-クレジット価格が上昇している主な要因は、GX-ETSの本格稼働と企業の脱炭素目標強化です。
- GX-ETSの本格稼働:2026年度から排出量取引が本格化し、GX-ETS参加企業によるJ-クレジット需要が増加
- 開示と用途別の条件確認:CDP等の開示要件と、SBT目標外のBVCMへの貢献を分けて検討する
- サプライチェーン排出量対応:大企業からサプライヤーへの排出削減要請が強まり、中小企業の購入需要が増加
- クレジット供給量の限界:新規プロジェクトの認証には時間がかかり、供給が需要に追いつかない状況
特にGX-ETSでは、J-クレジットが排出枠の一部として使用可能とされているため、大口需要の増加が価格を押し上げる要因になっています。
調達タイミングの考え方
価格上昇トレンドが続く中、早期の調達を検討する企業が増えています。調達タイミングを判断する際のポイントは以下のとおりです。
- 年度末の駆け込み需要に注意:3月は温対法報告の締め切り前で需要が集中し、価格が上昇・在庫が減少する傾向
- 複数年度分の事前調達:中長期の目標が明確な場合、複数年度分をまとめて購入することでコストを平準化できる
- 価格変動リスクのヘッジ:毎年の調達量を分散し、市場価格の変動リスクを抑える戦略も有効
調達計画を立てる際は、自社の排出量目標・予算・クレジットの使用時期を明確にした上で、プロバイダーやマーケットプレイスに相談することをおすすめします。

J-クレジット購入から活用までの手続きの流れ
J-クレジットの購入から活用までには、購入・無効化・報告の3つのステップがあります。ここでは各ステップの手続きを解説します。

STEP 1. 購入先の選定〜契約
購入先との契約前に、自社口座へ移転して保有するか、購入先に代理無効化を依頼するかを決めます。自社で保有する場合は、J-クレジット登録簿システムの口座が必要です。
- 購入目的の明確化:温対法報告、CDP開示、GX-ETSへの活用、自主的なオフセットなど
- 必要量の算定:自社排出量と削減目標のギャップを算出
- 購入先の選定:プロバイダー・マーケットプレイス・相対取引・東証市場から選択
- 口座と手続きの確認:自社保有なら口座を用意し、代理無効化なら購入先の対応範囲を確認
- 売買契約の締結:価格・数量・支払条件・移転時期を合意
- 移転または代理無効化:契約した方式で手続きを進め、記録を確認
購入先に依頼する業務と、自社で行う算定、社内承認、対外発信の確認を分けます。決裁前の比較資料には、候補を選んだ理由、購入総額、実施日程、受け取る証憑をまとめると、関係部署が条件を確認しやすくなります。
STEP 2. 無効化手続きの方法
購入したJ-クレジットを排出量のオフセットに使用するためには「無効化」の手続きが必要です。無効化とは、クレジットを使用済みとして消却し、二重使用を防止する処理です。
無効化の手続きは以下の流れで行います。
- J-クレジット登録簿システムにログインする
- 「無効化申請」メニューから手続きを開始する
- 無効化するクレジットの数量・使用用途を入力する
- 申請内容を確認し、送信する
- 無効化完了後、「無効化通知書」をダウンロードする
無効化通知書は、温対法報告やCDP報告の証拠書類として必要になります。無効化の手続きは登録簿システム上でリアルタイムに完了し、無効化通知書もその場でダウンロードできます。時間がかかるのはその手前のクレジット調達と社内決裁のため、年度末の報告に使う場合は余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
STEP 3. 温対法・省エネ法・CDP/SBTへの報告
無効化したJ-クレジットは、各種報告制度に以下のように活用できます。
| 報告制度 | J-クレジットの活用方法 | 必要書類 |
|---|---|---|
| 温対法(算定・報告・公表制度) | 調整後排出量の算定に使用 | 無効化通知書 |
| 省エネ法 | 原単位の算定に一部活用可能 | 無効化通知書 |
| CDP | Scope 1・2排出量のオフセットとして報告 | 無効化通知書、プロジェクト情報 |
| SBT | 短期・長期の削減目標にクレジットは算入不可。BVCMは別途検討 | 目標達成の削減実績と区別して記録 |
| RE100 | 再エネ電力由来クレジットを再エネ使用量として計上 | 無効化通知書 |
| GX-ETS | 制度要件と上限の範囲内で、無効化量を実排出量から控除 | 無効化通知書、GX-ETS関連書類 |
報告・利用の可否は、対象クレジットと各制度の最新要件を照合して確認します。SBTの短期・長期削減目標の達成実績に、カーボンクレジットを算入することはできません。出典:SBTi公式FAQ。書類の作成・確認の責任分担も、契約前に購入先と整理してください。
よくある質問(FAQ)
Q. J-クレジットは最低何t-CO2から購入できますか?
A. マーケットプレイスやプロバイダーを利用すれば、1t-CO2から購入可能です。相対取引の場合は売り手の条件により異なりますが、100t-CO2程度からの取引が一般的です。東証カーボン・クレジット市場では、取引単位が比較的大きく設定されているため、大量調達向けとなります。自社の必要量が少量の場合は、少量取引に対応したプロバイダーやマーケットプレイスを選ぶことをおすすめします。
Q. J-クレジットの購入に必要な初期費用はいくらですか?
必要な費用は、クレジット購入代金に加え、仲介・移転・無効化など依頼する手続きの費用です。手数料と税の扱いを含めた総額で見積りを比較してください。相対取引では、自社で行う契約・移転等の事務負担も確認します。
同じ用途と数量でも、希望する地域、種類、納期によって候補と価格は変わります。比較時点を揃え、見積りの有効期限も確認してください。単価の差がクレジットの違いによるものか、含まれる手続きの違いによるものかを購入先に確認すると、総額の理由を社内で説明できます。
Q. 購入したJ-クレジットに有効期限はありますか?
A. J-クレジット自体に有効期限はなく、無効化するまで保有し続けることができます。ただし、温対法報告やCDP報告で使用する場合は、報告対象年度に合わせて無効化する必要があります。また、GX-ETSで排出枠として使用する場合は、制度が定めるルールに従う必要があります。長期保有を予定している場合でも、制度変更のリスクを考慮して計画的に活用することをおすすめします。
Q. J-クレジットとJCM(二国間クレジット制度)の違いは何ですか?
A. J-クレジットは国内での削減活動から創出されるクレジット、JCMは海外での削減活動から創出されるクレジットです。J-クレジットは日本国内の省エネ・再エネ・森林吸収プロジェクトが対象です。一方、JCMは日本と協定を結んだパートナー国(インドネシア、ベトナム、タイなどの国)での削減プロジェクトが対象となります。温対法報告ではどちらも活用可能ですが、CDPでは報告要件を確認します。SBTの短期・長期削減目標の達成実績に、カーボンクレジットを算入することはできません。
Q. J-クレジット購入後、どのくらいで利用できるようになりますか?
A. 購入契約締結後、クレジットの移転手続きが完了すれば即日利用可能です。ただし、初めて購入する場合はJ-クレジット登録簿システムへの口座開設が必要で、開設には2週間程度かかります。プロバイダーやマーケットプレイスを利用する場合は、口座開設の手続きを並行して進められるため、スムーズに購入できます。年度末の報告に間に合わせるためには、余裕を持ったスケジュールで購入手続きを始めることが重要です。
まとめ:用途・数量・時期を揃えてJ-クレジットの購入先を比較する
J-クレジットは、自社の排出削減努力だけでは達成できない脱炭素目標を補完する有効な手段です。本記事のポイントを整理します。
- J-クレジットを購入した企業は大企業から中小企業まで幅広く、温対法報告・CDP開示・GX-ETS・PR活用など目的は多様
- 購入方法はプロバイダー仲介・相対取引・東証市場・マーケットプレイスの4つがあり、調達量や目的に応じて選択
- 価格ハブの基準日・区分を確認し、同じ用途・数量・時期の見積りを比較する
- 購入後は無効化手続きを行い、各種報告制度に活用できる
カーボンリンクでは、用途と希望条件を伺い、候補と価格、数量、引渡し時期を個別に確認してご案内します。代理無効化や証憑が必要な場合は、その対応範囲も確認します。確認中の事項は確定した取引条件と分けてお伝えします。

