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JCMクレジットの購入方法と価格相場|口座開設から調達までの実務

2026 10/10
JCM(二国間クレジット)
2026年8月18日2026年10月10日
JCMクレジットの購入方法と価格相場|口座開設から調達までの実務
監修増山 大知(カーボンリンク株式会社 代表取締役)

JCMクレジットの購入方法は、①開発事業者・保有者からの直接購入(相対取引)、②商社・専門事業者(仲介)経由の購入、③自社でのJCMプロジェクト参画の3つです。J-クレジットと異なり取引所に上場しておらず、すべての取引が当事者間の相対で行われます。

本記事では、JCM登録簿の口座開設から売買契約・移転手続きまでを整理します。JCMには公表相場がないため、他制度の公開参考額と個別見積りを区別し、購入判断には同じ条件の見積りを確認します。

この記事を読むことで、JCMクレジットを「どこから・いくらで・どんな手順で」購入すればよいかを判断でき、売り手から提示された見積りの妥当性を自分で評価できるようになります。

この記事を読むとわかること
  • JCMクレジットが取引所で買えない理由と、購入の3ルート
  • 公表相場と個別の価格提示を分ける見方
  • JCM登録簿の口座開設・移転手続きの費用と期間
  • 売り手・開発事業者を見極めるデューデリジェンスの要点
  • 購入したクレジットのGX-ETS・温対法での使い方と税務

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目次

JCMクレジットとは:購入前に押さえる制度の基本

購入実務に入る前に、JCMクレジットがどんな制度から生まれ、J-クレジットと何が違うのかを確認します。この違いが、そのまま「買い方の違い」につながります。

二国間クレジット制度の仕組みとパートナー国32か国

JCM(Joint Crediting Mechanism、二国間クレジット制度)は、日本の脱炭素技術・製品・インフラをパートナー国に展開し、実現した温室効果ガスの排出削減・吸収の成果を両国で分け合う制度です。パートナー国は2013年のモンゴルを第1号として拡大を続け、2026年4月時点で32か国に達しています。

プロジェクトの実例は、太陽光発電や高効率ボイラー・省エネ設備の導入、廃棄物発電など、日本企業の技術を核にしたものが中心で、これまでに約300件が組成されています。削減・吸収量は測定・報告・検証(MRV)を経てクレジットとして発行され、合同委員会の決定により、日本側とパートナー国側の関係者に配分されます。

日本側に配分されたクレジットは、日本のNDC(国が決定する貢献)の達成に算入でき、政府は官民連携で2030年度までに累積約1億t-CO2の国際的な排出削減・吸収量の確保を目標に掲げています。制度の全体像はJCM(二国間クレジット制度)の解説記事で詳しく扱っています。

出典:民間資金を中心とするJCMプロジェクトの組成ガイダンス(2026年改定版)|環境省ほか

2025年の法制化とJCMA(実施機構)の発足

2025年4月1日、改正地球温暖化対策推進法(温対法)の施行によりJCMが法制化され、指定実施機関としてJCMA(JCM実施機構)が発足しました。従来は複数の省庁・合同委員会事務局に分散していたパートナー国との調整、登録簿の運営、各種申請手続がJCMAに一元化されています。

購入者にとっての実務上の意味は、口座開設もクレジット移転も、申請窓口がJCMAに揃ったことです。後述する登録簿の手続きは、いずれもJCMAへの電子メール申請で進みます。

出典:民間資金を中心とするJCMプロジェクトの組成ガイダンス(2026年改定版)|環境省ほか

J-クレジットとの違い:買い方が根本的に異なる

同じ「国が関与するクレジット」でも、J-クレジットとJCMクレジットは買い方が根本的に異なります。主な違いは以下のとおりです。

項目 J-クレジット JCMクレジット
制度の性格 国内の削減・吸収プロジェクト 海外(パートナー国32か国)でのプロジェクト
取引所 東証カーボン・クレジット市場に上場 非上場(全量が相対取引)
公表価格 JPX基準値段が毎営業日公表 公表相場なし
登録簿口座 法人・個人とも開設可 法人のみ(内国・外国法人可)
供給構造 中小規模の国内案件が多数 政府支援の海外案件が中心で流通量が薄い

JCMの個別提示と東証のJ-クレジット基準値段は、時点・区分・契約条件が異なります。価格だけでなく用途、発行済み数量、引渡し時期をそろえて比較してください。

JCMクレジットに「公表相場」が存在しない理由

JCMクレジットの価格を調べようとすると、J-クレジットのような公表価格がどこにも見つかりません。これは調べ方の問題ではなく、制度と流通の構造によるものです。

取引所に上場していない:東証市場の対象外

東京証券取引所のカーボン・クレジット市場で売買できるのは、J-クレジット、地域版J-クレジット、J-VER(J-クレジットの前身制度)であり、JCMクレジットは取扱対象に含まれていません。JCMクレジットの売買は、保有者と購入希望者が個別に条件を合意する相対取引だけで行われています。

取引所価格が存在しないため、「今日のJCM価格」を確認できる場所は制度上どこにもありません。

出典:カーボン・クレジット市場について|経済産業省中部経済産業局

公的な価格統計・指数もない

取引所がなくても、公的機関が相対取引の価格統計を集計・公表していれば相場観は作れますが、JCMにはそれもありません。当社が2026年7月に世界銀行のState and Trends of Carbon PricingとCarbon Pricing Dashboard、IGES(地球環境戦略研究機関)のJCMデータベース、ADB(アジア開発銀行)の公表資料を確認した範囲では、JCMクレジット固有の価格統計は見つかりませんでした。

IGESのJCMデータベースは方法論・プロジェクト・実現可能性調査の情報を網羅する優れた資料ですが、価格情報は含まれていません。実勢価格を知る手段は、実際の取引、複数の売り手からの見積り、流通関係者へのヒアリングに限られます。

出典:IGES Joint Crediting Mechanism (JCM) Database|IGES

流通が薄い構造:クレジットの多くは政府に配分される

価格が見えないもう一つの理由は、そもそも市場に出回る玉が少ないことです。これまでに組成された約300件のJCMプロジェクトの大半は、環境省の設備補助事業をはじめとする政府資金の支援で実現しており、日本側に配分されるクレジットの相当部分は、資金負担割合等に応じて日本国政府が取得してきました。

民間保有者が移転できる数量は、日本側の発行・配分全体とは異なります。提示された数量が配分済みか、登録簿で移転できる状態かを確認します。

出典:民間資金を中心とするJCMプロジェクトの組成ガイダンス(2026年改定版)|環境省ほか

JCMクレジットの価格参考例と確認条件

JCMは個別見積りで条件を確認。発行済みの購入と将来発行のオフテイクを分け、GX-ETSの参考上限取引価格とJ-クレジットの東証基準値段は異なる制度の参考額として示す図

JCMには取引所の公表相場や公的な価格指数がありません。以下の制度上の参考額とJ-クレジットの東証基準値段は、JCMの約定価格を示すものではなく、対象や条件が異なる比較材料です。実際に買える数量と価格は、発行・配分・引渡しの状態を確認したうえで個別に見積りを取ります。

発行済みの購入は移転可能な数量と総額を確認

発行済みのクレジットを購入する場合、売り手が保有する数量と移転できる口座、ビンテージ、引渡し時期をまず確認します。提示が単価だけなら、手数料、無効化の負担、契約通貨を加えた総額を同じ条件で比べます。

口頭での提示や売り希望価格は、約定価格や現在購入できる在庫の証拠になりません。契約前には、対象プロジェクトの登録・発行・配分の記録、提示数量に対応する売り手の権利、登録簿上の移転方法を確認してください。

JCMの相対取引では、案件ごとに契約通貨と決済時期を確認します。ドル建ての提示なら為替によって円建ての総コストが変わるため、換算時点と手数料をそろえて比較します。

将来発行のオフテイクは前払いと未達時の条件を確認

将来発行を前提とするオフテイクでは、予定数量を発行済み在庫として扱えません。制度の適用、登録、モニタリング、検証、配分の結果によって、引き渡せる数量や時期が変わります。価格を比べる前に、未発行・未配分のどの段階にあるか、支払いがいつ発生するかを確認します。

発行済みの見積りと将来発行の提示を同じ単価で比べると、発行不成立や数量不足、納期のずれ、前払金の回収リスクを見落とします。買い手と売り手がそれぞれ負うリスク、未達時の返金や代替供給、引渡し時点の為替条件を契約で分けて確認します。

前払い金の保全も設計事項です。全額一括の前払いではなく、プロジェクトの進捗(登録・検証・発行)に連動した分割払いにする、未達時の返金・代替供給条項を入れるといった手当てを契約に織り込みます。

4,000円台で比較すべき基準:GX-ETS参考上限価格とJ-クレジット

JCMクレジットの見積りを評価する際は、GX-ETSの排出枠価格と、国内の代替材であるJ-クレジット価格が比較基準になります。経済産業省が示した2026年度の排出枠価格コリドーは上限4,300円・下限1,700円です。ただし、4,300円はJCM価格を直接規制する上限ではなく、排出枠の「参考上限取引価格」です。

上限価格で政府へ納付できる措置の判断対象は、排出枠の市場平均価格が一定期間以上上限を上回る場合、上限以下の売り数量が著しく少ない場合、災害などで取引が困難な場合です。

いずれかに該当し、経済産業大臣が償却への支障と措置の必要性を認めて告示した場合に、法40条2項の限度内で納付が認められます。個社が調達に努力しただけで自動適用される制度ではなく、期限に未償却分が残れば法41条の1.1倍の負担金が生じます。

出典:GX推進法40条、41条|e-Gov法令検索、同法施行令6条|e-Gov法令検索

J-クレジットの東証基準値段は、2026年8月14日の日報で森林4,400円、省エネ4,950円、再エネ電力4,950円でした。これは取引所の区分別基準値段であり、JCMの個別提示とは対象・時点・引渡し条件が違います。出典:東京証券取引所の日報(2026年8月14日)。

出典:排出量取引制度小委員会 中間整理|経済産業省

出典:カーボン・クレジット市場日報(2026年8月14日)|東京証券取引所

出典:Japan’s carbon price cap disappoints JCM developers|S&P Global

見積りを評価する物差し【公開参考額と確認条件】

以下は公的なJCM価格表ではありません。報道上の開発事業者の希望価格、制度上の排出枠参考価格、東証のJ-クレジット基準値段と、JCMの見積りで確認する条件を並べています。時点と取引対象が異なるため、同じ市場の約定価格として比較しないでください。

区分 価格・提示方法
(円/t-CO₂)
性格
JCMの発行済み 個別見積り 配分済みの移転可能量、引渡し時期、通貨、手数料を確認
JCMの将来発行 個別見積り 発行・配分前の予定数量、前払い、未達時の条件を確認
開発事業者の希望価格 4,000〜6,000円 S&P Global報道。実勢との乖離が大きい
GX-ETS参考上限取引価格(2026年度) 4,300円 排出枠価格の参考線。JCM価格の法的上限ではない
J-クレジット(東証基準値段) 4,400〜4,950円 森林・省エネ・再エネ電力の2026年8月14日時点

見積りの高低は、同じクレジット状態・数量・ビンテージ・引渡し時期・通貨・手数料の条件を揃えて判断します。異なる制度の公開参考額との単純比較で割高と断定せず、複数の候補を照合してください。

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JCMクレジットの購入方法は3ルート【比較表】

JCMクレジットの購入3ルート|直接相対・仲介経由・プロジェクト参画の比較

価格の物差しを持ったうえで、次は「どこから買うか」です。購入ルートは3つに整理できます。

ルート①:開発事業者・保有者からの直接購入(相対)

発行済みクレジットの保有者や、プロジェクトを組成した開発事業者と直接交渉して買うルートです。中間コストが乗らず、数量・ビンテージ・引渡時期などの条件交渉の自由度が最も高い一方、相手の信用力・発行実績の確認(デューデリジェンス)を自社で行う必要があります。

海外の開発事業者から日本企業への直接の売り込みも増えていますが、後述するとおり、発行実績のない業者や配分前の数量を語る業者が混ざっている点に注意が必要です。相手が海外法人の場合は、契約言語・準拠法・紛争解決条項・前払い金の保全まで含めた契約設計が必要になり、社内の法務体制もルート選びの判断材料になります。

ルート②:商社・専門事業者(仲介)経由の購入

商社や専門事業者経由では、売り手との条件調整や手続き支援の範囲を確認できます。売り手の確認、登録簿申請、無効化を誰が担うかは事業者・契約ごとに異なります。

公表相場のないJCMでは、提示価格の根拠、手数料、移転可能数量、手続きの責任範囲を確かめます。カーボンリンクは買い手・投資家・オフテイカー候補の紹介と条件整理を支援します。

事業者を選ぶ際は、提示価格が見積りか成立価格か、配分済み数量を誰が確認するか、登録簿の移転・無効化を誰が実施するかを契約前に明確にします。

ルート③:自社でJCMプロジェクトに参画する

購入ではなく、自社がJCMプロジェクトの参加者となってクレジットを取得するルートです。環境省の設備補助事業を使えば初期投資の最大2分の1の補助を受けられますが、日本側に配分されるクレジットの相当部分は資金負担割合等に応じて政府が取得するため、手元に残る量は限定的です。

政府資金を使わない民間資金型のプロジェクトであれば、日本側配分クレジットは主に民間事業者が取得できる設計です。いずれも数年がかりの取り組みであり、毎年まとまった量を長期に確保したい企業の中長期戦略に向きます。補助事業の使い分けはJCM補助金の実務の解説記事で詳しく扱っています。

出典:民間資金を中心とするJCMプロジェクトの組成ガイダンス(2026年改定版)|環境省ほか

3ルートの比較と選び方

3ルートの特徴を比較すると以下のとおりです。

ルート 向いている企業 数量 価格水準 リードタイム
①直接購入 DD体制のある大口購入者 大口中心 実勢〜交渉次第 数週間〜数か月
②仲介経由 初めての購入・小口購入 小口から可 実勢+介在コスト 数週間〜
③プロジェクト参画 長期・大量に確保したい企業 計画次第 開発段階水準 数年

近い年度の制度報告や自主的オフセットに使うなら①か②、複数年で大量に必要なら③の併用が基本形です。数量・時期・社内のリスク許容度の3点で選んでください。

初めて購入する企業には、まず仲介経由の小口で口座開設から移転・無効化までの一連の手続きを一度経験し、勘所をつかんでから大口の直接交渉や長期契約に進む段階的な進め方をおすすめしています。手続き自体は難しくありませんが、契約条件の確認項目は経験がないと抜けやすいためです。

購入から利用まで:口座開設・移転・無効化の4ステップ

JCMクレジット購入の手順|口座開設から売買契約・移転申請・無効化までの4ステップ

買い先が決まった後の購入手続きは、口座開設・売買契約・移転申請の3ステップです。制度報告やオフセットに利用する場合は、購入後の無効化を加えた4ステップになります。J-クレジットと似ていますが、申請窓口と手数料体系が異なります。

ステップ1:JCM登録簿に法人口座を開設する(14,400円・約2週間)

JCMクレジットを保有するには、日本国JCM登録簿(jcmregistry.go.jp)に法人等保有口座を開設します。内国法人だけでなく外国法人も開設できますが、個人は開設できません。口座は一法人につき一つで、譲渡もできません。

申請は、JCM指定実施機関であるJCMAに申請書と登記事項証明書等の添付書類を電子メールで送付して行います。手数料は14,400円、処理期間の目安は2週間程度です。購入契約の直前に慌てて開設するのではなく、検討段階で先に開けておくと引渡しがスムーズです。

口座の保有状況や記録内容を第三者に示す必要がある場合(監査対応など)は、記載事項証明書の発行を1通1,200円で申請できます。

出典:日本国JCM登録簿の利用に係る各種手続に関する手順書|JCM登録簿

ステップ2:売買契約を結ぶ(確認すべき条件)

売買契約では、数量と単価に加えて、削減・吸収が実現した時期(ビンテージ)とクレジットの発行日を必ず特定します。後述するとおり、この2つの組み合わせで温対法報告に使えるかどうかが分岐するためです。

売買対象が日本・パートナー国への配分後に移転可能な数量かを証憑で確かめ、引渡し時期と決済条件を契約に明記します。価格の妥当性は過去の掲載値だけで判断せず、同時点・同条件の複数見積りで比較します。

ステップ3:移転申請(JCMA経由・手数料2,500円)

クレジットの移転(口座間の振替)は、登録簿の画面上で完結する操作ではなく、JCMAへの申請様式の提出が必要です。温対法の施行令に基づき移転手数料2,500円がかかり、手数料の納付確認後にJCMAが移転作業を行います。移転が完了すると、移転元・移転先の双方にメールで通知されます。

例外として、2020年以前に実現した削減・吸収に由来し2025年4月1日以降に発行されたクレジットの移転は手数料が不要です(申請様式の提出自体は必要です)。

出典:日本国JCM登録簿の利用に係る各種手続に関する手順書|JCM登録簿

ステップ4(利用時):購入後に無効化する

オフセットや制度報告にクレジットを使うには、保有しているだけでは足りず、登録簿上で無効化(使用済み処理)を行う必要があります。無効化・自主取消しは政府保有口座への移転として登録簿上で申請し、手順書上の処理期間の目安は2週間です。

温対法の報告日程やGX-ETSの履行日程がある場合は、そこから逆算して無効化のスケジュールを組んでください。制度を扱う責任主体と処理期間を確認し、遅くとも社内期限の1か月前には手続きを始めることを推奨します。

売り手・開発業者を見極める確認項目

相対取引のJCMでは、売り手の見極めが取引の安全性を左右します。ここでは、過去に受けた持ち込み案件と公式情報を照合する際に確認した要点を3つ紹介します。

「登録済み」と「発行済み」を区別する

開発業者が語る「プロジェクト◯件の実績」は、登録段階の案件を含んだ数字であることが少なくありません。JCMのプロジェクト情報と発行量は公式サイトで案件ごとに公開されており、登録済みでも発行実績がゼロという開発業者は珍しくありません。

当社が受けた持ち込み案件の確認でも、ウェブサイト上で多数の実績を掲げる海外業者を公式データベースと突合したところ、クレジットの発行実績が一件もなかった例が複数あります。発行実績の有無は、約束した数量・時期どおりに引き渡せるかのリスクに直結するため、必ず公式情報で確認してください。

「年間◯万トン創出」はグロスかネットか

開発業者が示す創出見込み量は、パートナー国政府・日本政府への配分前のグロスの数字で語られることが多い点にも注意が必要です。政府支援を受けた案件では相当部分が政府に配分され、民間資金型でも配分比率は両国政府の協議を経てプロジェクト登録時に決まるため、事前に確定していません。

売買の対象にできるのは配分後に売り手の口座に入るネットの数量だけです。契約前に、配分を裏付ける証憑(合同委員会の決定・通知等)の提示を求めてください。

会社の実在性と「実績年数」の読み替え

「20年の実績」といった年数の主張が、法人としての実績ではなく創業者個人のキャリアの読み替えであるケースは、当社が受ける海外開発業者の売り込みでも繰り返し確認しています。法人登記上の設立年と主張されている実績年数を突合するだけで、かなりの確度でふるいにかけられます。

当社が受けた持ち込み案件の確認でも、設立から数年の法人が長期の実績を標榜していた例がありました。実在性・設立年・発行実績・配分証憑の4点が揃わない売り手とは、価格がどれだけ魅力的でも前払い型の契約は避けるべきです。

価格を提示する売り手には、クレジットの状態、数量、ビンテージ、引渡し時期、通貨と費用の内訳を確認します。過去の参考提示から一律の割高基準は定められません。

購入したJCMクレジットの使い道

JCMクレジットの温対法利用可否の判定フロー|削減実現時期と発行日の組み合わせで分岐

買ったクレジットをどの制度で使えるかは、購入前に確認しておくべき最重要ポイントです。用途は大きく3つあります。

GX-ETS:唯一利用できる海外クレジット(J-クレジットとの合計で上限10%)

2026〜2030年度のGX-ETSでは、J-クレジットとJCMクレジットの無効化量を合計し、各年度の実排出量の10%まで控除できます。JCMの個別クレジットは温対法に準拠する条件も確認します。対象年度の制度はGX-ETSとJCM、ビンテージと2031年度以降の未定事項はJCMの年限問題を参照してください。出典:政府説明資料(2026年6月29日)。

VerraやGold Standardなどのボランタリークレジットは、GX-ETSでは利用できません。対象企業に課されるのは、クレジット無効化後の排出実績量と同量の排出枠を排出年度の翌年度1月31日に保有する義務です。1月31日はJCMクレジット単独の無効化期限ではありませんが、JCMの移転・無効化には手続期間があるため、十分に前倒しして調達する必要があります。

出典:排出量取引制度小委員会 中間整理|経済産業省

温対法(SHK制度):ビンテージと発行日で可否が分岐

温対法の算定・報告・公表制度(SHK制度)では、JCMクレジットを無効化することで調整後排出量から控除できます。ただし利用の可否は、削減・吸収が実現した時期(ビンテージ)とクレジットの発行日の組み合わせで分岐します。

2020年12月31日以前の削減・吸収分については、2025年3月31日までの発行、または2025年4月1日以降発行でも同年3月31日までにPDDのパブリック・インプットを開始した経過措置に該当するかを確認します。2021年1月1日〜2030年12月31日実現分は、この表では発行日条件なしでSHK・GX-ETS利用可と整理されています。実際の用途と手続きは最新の制度案内に照合します。出典:政府説明資料の適格性表。

出典:JCMの概要と最新動向|環境省

税務:無効化した年度に寄附金として損金算入

法人が購入したJCMクレジットを無効化した場合、無効化された日を含む事業年度に、その価額相当額を国等に対する寄附金として損金算入できることを国税庁が2016年に確認しています。会計・税務の説明材料として、経理部門と共有しておくとよい論点です。

出典:二国間クレジット制度の下で取得するクレジットの取引に係る税務上の取扱いについて|国税庁

SBTの短期・長期削減目標の達成実績に、カーボンクレジットを算入することはできません。BVCMへの貢献や自主的なオフセットは、目標に向けた削減実績と分けて検討・報告します。出典:SBTi公式FAQ。

制度報告以外では、自治体の排出量報告制度や、取引先・顧客向けにカーボンオフセットを表明する自主的な用途でも無効化したJCMクレジットを活用できます。用途ごとに求められる証憑(無効化の記録・対象排出の特定)が異なるため、購入時点で使い道を決めておくと無駄がありません。

相談時は、温対法報告・自主的なオフセットなどの用途、必要量(t-CO2)、希望する引渡し・無効化時期、予算感をお知らせください。未確定の項目があっても、候補を比較するための条件整理から相談できます。JCMは案件ごとの紹介・調整となり、在庫・固定価格・発行・制度適格性や将来供給を保証するものではありません。専門的な確認と実行の責任主体は、関係者間で明確にします。

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よくある質問(FAQ)

Q. JCMクレジットは個人でも購入できますか?

個人名義では保有できません。

JCM登録簿の口座を開設できるのは内国法人・外国法人に限られており、個人名義で口座を開設してクレジットを直接保有することはできません。

個人でカーボン・クレジットに関わりたい場合は、J-クレジットの小口購入サービス等が選択肢になります。詳しくはJ-クレジットの個人売買の解説記事を参考にしてください。

Q. 最低購入量はありますか?

制度上の最低数量の定めはありません。

実務上は売り手ごとに最低ロットの条件が付くことが多く、当社が確認する範囲では、開発事業者との直接取引は数千〜数万トン単位が中心です。

数十〜数百トンの小口購入は、仲介事業者経由で在庫から切り出してもらうのが現実的です。

Q. JCMクレジットの価格はどこで確認できますか?

公表される価格は存在しません。

JCMには取引所の継続的な価格指標がないため、価格は案件ごとの提示条件と成立条件を分けて確認します。

上記の表には異なる時点と種類の参考値が混在します。購入判断は、同時点・同条件の複数見積りと、用途に合う適格性・証憑の確認で行います。

Q. J-クレジットとJCMクレジットのどちらを買うべきですか?

用途と数量次第です。

GX-ETSと温対法では、それぞれ適用要件と手続き時期が異なります。JCMとJ-クレジットの価格差も、同時点・同条件の見積りなしに一般化できません。

供給を確保できる前提で、まとまった数量をコスト重視で調達するならJCM、少量を手軽に確保するならJ-クレジット、という使い分けが基本形です。

Q. 購入したJCMクレジットは転売できますか?

できます。

保有口座間の移転手続き(JCMAへの申請・手数料2,500円)を踏めば、他の法人への売却が可能です。

ただし、国は日本のNDC達成への活用(無効化)に協力するよう要請しており、転売を繰り返すより自社のオフセット・制度報告に使うことが制度の趣旨に沿います。

まとめ:用途と取引条件を確認して購入する

JCMクレジットの購入は、①直接相対、②仲介経由、③プロジェクト参画の3ルートに整理でき、手続きは登録簿の口座開設(14,400円・約2週間)と移転申請(2,500円)で完結します。難しさは手続きではなく、公表相場がない中での価格の妥当性判断と、売り手の見極めに集中しています。

JCMには公表相場がありません。価格、数量、発行・配分の状態、引渡し、通貨と手数料をそろえ、実際の見積りで比較します。将来発行の提示は、発行済み在庫の購入とは分けて判断します。

カーボンリンクは、JCMクレジットを検討する買い手・投資家・オフテイカー候補の紹介と、用途・数量・希望時期・価格感などの条件整理を支援しています。売り手や適格性の専門的な確認が必要な場合は、責任主体を明確にしたうえで関係者との進行を調整します。

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この記事を書いた人

カーボンリンク編集部のアバター カーボンリンク編集部

カーボンリンク株式会社が運営するGX専門リサーチメディア「Carbonlink Research」の編集部。J-クレジット制度(経済産業省・環境省・農林水産省共同運営)・GX-ETS(排出量取引制度)・JCM(二国間クレジット制度)・国際カーボンクレジット市場を主要テーマとし、企業のGX担当者やクレジット保有者が意思決定に使えるリサーチ記事を執筆・監修している。カーボンリンク社はJ-クレジットの調達から、語れるオフセットストーリーの設計・発信支援までを一体で提供する「カーボンオフセットデスク」をはじめ、「J-クレジット買取センター」、仲介事業者向けプラットフォーム「OTC Hub」を運営しており、累計3.5億円を超える取引の最前線で得た実務知見を記事に反映している。

この記事の監修者

増山 大知の写真 増山 大知 カーボンリンク株式会社 代表取締役

カーボンリンク株式会社 代表取締役。J-クレジットの調達から、地域に語れるオフセットストーリーの設計・発信支援までを一体で提供する「カーボンオフセットデスク」をはじめ、「J-クレジット買取センター」、仲介事業者向けプラットフォーム「OTC Hub」を運営。累計3.5億円を超えるカーボンクレジット取引の実務経験をもとに、Carbonlink Research の全記事を監修している。

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