J-クレジットが「不足している」と判断するには、同じ期間・種類・用途について、実際に購入したい数量と購入できる数量を比べる必要があります。認証された総量、東証で売買された量、販売中の在庫は別の数字です。2026年10月1日時点で、国内全体の確定した購入需要と売買可能な供給を同じ定義で集計した数値を、この記事では示せません。
買い手が先に確認したいのは、自社の用途に使えるクレジットが、必要な日までに、必要量・予算・証憑の条件で確保できるかです。以下では公表統計と個別見積りの役割を分け、仮定を置いた計算例で不足を判定する手順を示します。

- 認証量・市場売買高・販売可能量の違い
- 自社の不足量を再計算できる方法
- 用途別に確認する調達条件
- 東証の基準値段と見積価格の違い
- 購入から無効化までに必要な確認
需給を比べる前に、三つの数量を分ける
国内全体の「供給」と呼ばれやすい数値には、認証済みの累積量、その年に認証された量、東証市場の売買高、いま販売できる在庫があります。どれを使うかで結論が変わります。J-クレジット制度事務局の統計を読むときは、集計対象、単位、期間、累積か単年かを確認してください。
| 数字 | 読み方と限界 |
|---|---|
| 制度事務局の認証量 | 一定期間に制度上認証された量。販売中の在庫や買い手の用途別適合量ではありません。 |
| 東証市場の売買高 | 当該市場で成立した売買の量。相対取引を含む国内全体の流通量ではありません。 |
| 販売者の提示在庫 | 指定銘柄・数量・時期で提示された量。契約、支払い、受渡し前には確保済みとは限りません。 |
| 買い手の必要量 | 用途と年度を定めた自社の調達計画。制度上使える上限は実際の注文量を表しません。 |
東証の日報には区分別の基準値段と売買高が載ります。基準値段は売買がない日にも前回値が引き継がれるため、掲載価格で希望数量を購入できることは示しません。出典:東証カーボン・クレジット市場日報、市場制度概要。
2026年10月1日時点の計算例:自社の不足量を出す
次の数値は市場の観測値ではなく、計算方法を示すための仮定です。ある企業が同じ年度・用途に使うJ-クレジットを1,000t-CO₂計画し、条件を満たす600t-CO₂の受渡しを契約で確保したとします。不足量は「必要量1,000 − 確保済み600 = 400t-CO₂」です。一般式は「不足量 = max(0, 必要量 − 条件を満たす確保済み量)」です。
再計算するときは、必要量と確保済み量の双方について、対象年度、用途、方法論または東証区分、数量、受渡し日を同じ欄に記録します。まだ見積り段階の数量は確保済み量に入れません。複数社からの見積りを単純に足すと、同じ案件を重複して数える可能性があります。契約済みの数量だけを一度ずつ数えてください。
国内全体の不足率を求めるには、同じ期間に購入意思が確認された需要量と、同じ条件で販売できる供給量が必要です。制度利用上限や企業数だけから需要量を作り、Scope 3、RE100、自主オフセットの想定量を足し合わせる方法では、用途の重複や実際に購入しない企業を除けません。全国需要や供給倍率を、確定した市場需給差として掲載できる段階ではありません。
用途によって購入可能量と必要量が変わる
GX-ETSの利用条件
GX-ETSの対象か、どの年度にどのクレジットを使えるかを、制度資料と自社の排出量に照らして確認します。外部クレジットの利用上限は潜在的な枠であり、対象企業がすべて上限までJ-クレジットを購入するという意味ではありません。JCMなど別の選択肢や排出枠との関係も、対象年度のルールで確かめます。制度資料:GXリーグ。
Scope 3、SBT、RE100の用途
サプライチェーンの排出量を算定・削減することと、クレジットを無効化して環境貢献を示すことは別です。SBTiの短期・長期削減目標の達成実績にクレジットを算入することはできません。クレジットをバリューチェーン外の削減貢献に使う場合も、その目的と表現を分けてください。出典:SBTi公式FAQ。
RE100、温対法、自主的なオフセットでは、求められるクレジットの種類、対象期間、証憑が異なります。まず利用先の現行要件を確認し、必要量だけを調達計画へ入れます。「Scope 3の開示対象排出量」全体をそのままJ-クレジット購入需要に置き換えることはできません。

種類ごとの不足は在庫と条件で判定する
森林、再エネ、省エネ、農業などを一つの価格や在庫にまとめると、用途に合うクレジットを選べません。制度事務局の方法論一覧で対象活動と方法論番号を調べ、種類と方法論の比較で候補を絞ってから、個別の見積りを求めます。
| 種類 | 購入前に確認する条件 |
|---|---|
| 再エネ由来 | 電力か熱か、利用先の要件、対象設備、認証番号、利用可能な年度 |
| 省エネ由来 | 対象活動と用途、方法論、認証量、移転時期 |
| 森林吸収由来 | 地域・プロジェクトへの希望、発行済み量、販売可能量、証憑 |
| 農業由来 | 方法論と地域への希望、在庫、最低数量、受渡し時期 |
上表は種類別の供給量や価格順位を示すものではありません。東証基準値段の基準日と区分を見たうえで、候補ごとの総額を比べます。最新の基準値段と歴史分析は集計時点が異なるため、個別見積りと混同しないでください。
購入できる数量を確認する手順
条件を固定して複数の経路で照会する
用途、年度、必要数量、希望する種類・地域、予算、受渡し日を一つの依頼書にまとめます。制度事務局の購入案内、購入先一覧、東証市場を照らし、同じ条件で在庫と見積りを確認します。窓口の掲載と購入可能量の保証は別です。
無効化までの範囲を契約に入れる
単価だけでなく、手数料・税を含む総額、登録簿の移転先、代理無効化の有無、無効化通知書の宛名と交付日を比較します。自社で口座管理するか、販売事業者に代理無効化を依頼するかによって手順が変わります。購入と無効化の手順を参照してください。
JCMを併用する場合の確認点
JCMクレジットを検討するときは、J-クレジットと制度、発行状況、利用可能な用途、受渡し条件が異なることを前提にします。国内の対象クレジットが不足しているという仮定だけでJCMを代替品として計上せず、対象年度の制度ルールと個別案件の発行・移転可能性を確認してください。JCMとJ-クレジットの違いで用途を比較できます。
まとめ:不足を数える単位をそろえる
J-クレジットの国内全体の需給差を、認証量、制度の利用上限、企業数から直ちに計算することはできません。自社の調達では、同じ年度・用途の必要量から、契約で確保できた適合数量を引いて不足量を出します。そのうえで、在庫、総額、受渡し日、無効化と証憑の条件を確認してください。
保有するクレジットの売却条件を確認したい場合は、買い手向けの購入相談と分けて買取査定へ銘柄・数量・認証時期をお知らせください。

