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#JCM(二国間クレジット)

JCMとJ-クレジットの違い|選び方と併用の実務

公開 2026.05.10·更新 2026.05.11

「JCMとJ-クレジット、どちらを買うべきか」。GX-ETS義務化フェーズが始まった2026年、調達担当者から最も多く寄せられる質問の一つです。両者ともGX-ETS下で適格な外部クレジットとして利用可能ですが、制度設計・価格・供給量・国際的信認・適用可能用途が大きく異なるため、自社の事業特性と目的に応じた使い分けが必要です。

本記事では、JCMとJ-クレジットの違いを表で整理したうえで、選び方の基準・併用パターン・ケース別の最適調達戦略を実務目線でまとめます。

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1分でわかる違い|比較表

比較項目J-クレジットJCM
発行主体日本政府(J-クレジット制度運営委員会)二国間政府(日本+パートナー国)
対象地域国内(日本)海外(32か国パートナー国)
制度開始2013年2013年
国際枠組み国内独自制度パリ協定6条2項準拠
価格レンジ¥2,000〜¥18,000/t¥3,000〜¥10,000/t(種類による)
年間供給量100〜150万t約60万t
GX-ETS適格◯(10%上限内で利用可)◯(10%上限内で利用可)
RE100適格一部(再エネ電力由来)案件により
相当調整不要(国内)必要(国際移転)
申請の主役国内事業者日本企業+パートナー国政府
認知度高い中(拡大中)

最も重要な違いは「国内 vs 国際」「単独申請 vs 二国間合意」の2軸です。J-クレジットは日本国内の脱炭素プロジェクトを対象とし、申請者は国内事業者単独で完結します。JCMは海外プロジェクトが対象で、日本企業とパートナー国政府の合意・相当調整が必要になります。

J-クレジット:国内・国認証・GX-ETS適格

J-クレジットは経済産業省・環境省・農林水産省の3省共管制度で、国内の温室効果ガス削減・吸収プロジェクトを対象としています。代表的なプロジェクトタイプは以下の通りです。

  • 再エネ電力由来(太陽光・風力・バイオマス発電)
  • 省エネ由来(高効率設備導入)
  • 森林吸収由来(森林経営活動)
  • 農業由来(農地土壌管理・家畜糞尿処理)

J-クレジットの強み

  • 国内認証:日本政府が直接認証するため、国内ESG開示・RE100報告での信頼性が確立
  • 手続きの完結性:申請から認証まで国内プロセスで完結し、外交調整が不要
  • GX-ETS適格:第2フェーズ以降も継続的に適格クレジットとして位置づけ
  • 流通市場の成熟:JPX市場・入札販売・買取事業者を通じた流動性が確保

J-クレジットの弱み

  • 供給制約:年間100〜150万t水準で頭打ち、需要拡大に追いついていない
  • 価格上昇:2024年→2025年で2倍近く上昇し、買い手のコスト負担増
  • 種別偏在:森林吸収由来などの希少種が極端な高値圏

JCM:海外・パリ協定6条準拠・国際的に通用

JCM(Joint Crediting Mechanism)は日本政府が二国間条約に基づいて運用する制度で、海外パートナー国における脱炭素プロジェクトを対象とします。創出されたクレジットは、日本とパートナー国の両方が削減実績として計上できる仕組みです。

JCMの強み

  • パリ協定6条2項準拠:国際的な相当調整プロセスを経た「真の国際クレジット」
  • 供給拡大余地:パートナー国32か国に広がる案件パイプライン
  • 海外展開との連動:技術輸出・現地ビジネス展開とクレジット創出が一体化
  • 政府補助の手厚さ:環境省JCM設備補助事業で最大1/2補助

JCMの弱み

  • 手続き複雑性:PINの早期提出・パートナー国政府合意・相当調整など実務負荷高
  • 政治・外交リスク:パートナー国の政権交代・政策転換が案件に影響
  • 認知度の限定性:中堅・中小企業のJCM理解はまだ進んでいない
  • 流通市場の未成熟:J-クレジットほどの取引チャネルが整備されていない

GX-ETSでの扱い:両方とも10%上限の適格クレジット

GX-ETS下では、企業が排出枠の遵守手段として外部クレジットを利用できますが、利用上限は実排出量の10%まで。この10%枠の中では、J-クレジットとJCMクレジットがいずれも適格として認められています。

つまり「JかJCMか」を二者択一で選ぶ必要はなく、両方を組み合わせて10%枠を埋めることが可能です。実際、GX-ETS本格稼働後の調達戦略では、ハイブリッド調達が主流になると予想されています。

排出規模J-クレジット枠(推計)JCM枠(推計)
年間10万t排出6,000t4,000t10,000t
年間100万t排出60,000t40,000t100,000t
年間500万t排出300,000t200,000t500,000t

※ J:JCM=6:4は例示。実際の比率は調達コスト・社内方針で柔軟に決定可能。

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ケース別の使い分け

ケース①:国内製造業(中堅)

推奨:J-クレジット主軸。RE100報告との整合性が高く、調達手続きが完結しやすい。GX-ETS対象になる場合は10%枠の一部にJCMを混ぜると価格分散になります。

ケース②:総合商社・プラントエンジニアリング

推奨:JCM主軸。海外案件創出と技術輸出が事業の中核と一致するため、自社創出のJCMクレジットを保有しつつ、不足分をJ-クレジットで補完するパターン。

ケース③:海外展開する大手電機・自動車

推奨:JCMとJ-クレジットの均衡調達。グローバル開示(CDP・SBT・ISSB)でJCMの国際的信認を活用しつつ、国内本社の調達ではJ-クレジットを使う二層構造。

ケース④:中小サプライヤー

推奨:J-クレジット主軸。買取事業者経由の少量調達でScope3要請に対応。JCMは案件組成の手続き負荷が高く、購入のみであれば流動性の観点でJ-クレジットが優位。

併用パターンの実務設計

JCMとJ-クレジットを併用する際の実務設計では、以下の3点を押さえる必要があります。

① 用途別の割り当て
GX-ETS遵守用にはJ-クレジット(手続き簡便)、Scope3対応・国際開示用にはJCM(国際的信認)、というように用途で振り分ける設計が一般的です。

② 種別別の調達
J-クレジットの再エネ電力由来と、JCMの再エネプロジェクトクレジットは類似用途で代替可能です。価格差・供給状況を見ながら柔軟に切り替えます。

③ 売却出口の確保
余剰クレジットが発生した場合の売却出口を、調達時点で想定しておくことが重要です。J-クレジットはJPX市場・入札販売・買取事業者など多様な出口がありますが、JCMクレジットは現状でも買取事業者経由の相対取引が現実的な選択肢です。

まとめ:選び方は「目的」と「事業特性」で決まる

JCMとJ-クレジットは「どちらが優れているか」ではなく、「自社の目的と事業特性にどちらが合うか」で選ぶべきクレジットです。GX-ETS対応・Scope3対応・国際開示・RE100報告など、用途ごとに最適解が異なります。

国内供給制約が構造化する中で、ハイブリッド調達こそが今後の主流になります。両制度の特性を理解したうえで、自社の調達ポートフォリオを設計することが、需給逼迫時代の経済合理性のある選択です。

関連記事として、JCMの全体像J-クレジット価格動向需給逼迫の構造も参照してください。


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